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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第1章「禁忌破り」

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第1章「禁忌破り」26 決断

歓迎されないことは分かっていたが、詫びたかった。見慣れた工場の門をくぐると事務室長に出くわした。彼は怒鳴った。
「どのツラさげて来たんだ、この親無し!」
周りの部屋から人々が集まったが、声をかける者はいなかった。カレナードは家令に取次を頼んだ。辛かったが、どうしてもシェナンディに会っておきたかった。苦渋に満ちたシェナンディが現れた。彼は家族用の食堂へ入れと身振りで示した。食堂のドアを閉め、カレナードは床に手を付いた。シェナンディの顔をまともに見ることが出来なかった。
「申し訳ありません…僕は取り返しのつかない罪を犯しました…。」
突然シェナンディの太い腕が彼の襟首をつかみ、平手が頬を打った。カレナードは食器棚にぶつかり、倒れた。
「お前の体が男のままなら、拳で殴っているぞ!」
フロリヤは父親に寄り添い、彼の拳を握りしめた。
「お父さま、お怒りは分かります。私が男ならカレナードを拳で殴ります。大切な妹の将来を狂わせたのです。その罪は殴ったくらいでは消えないでしょうけど。もう2度と会えないのですから、話を聞いてやりましょう。
カレナード、そこにひざまずきなさい。これから何処へ行き、何をするつもりなの。」
「僕は…僕はマヤルカお嬢さんを元に戻す方法を探します。玄街のヴィザーツなら知っているはずです。」
「それは危険だわ、カレナード。あなたは彼らに誘われたのでしょう。彼らがあなたを仲間にしたがっているのなら、絶対にあなたを離さないでしょうね。」
フロリヤの推察は恐ろしいものだった。
「私が玄街のその女なら、懐に飛び込んだ獲物を自分に都合のいいように作り替えるわ。従順な奴隷にね。やり方は簡単なのよ。私でもできるわ。あなたの素質なら途中で発狂するでしょうから、私はしないわ。
考えてもごらんなさい。玄街に身を置けば、玄街の仕事をすることになるわ。あなたは黒衣に身を包んで、アナザーアメリカに災いを落とすのよ。」
「アナザーアメリカに災いを…。」
カレナードは不意にヴィザーツ屋敷で夢うつつに聞いたベスティアンとアナの声を思い出した。
『アナザーアメリカの…ルール…ガーランドの施療棟…コード…グウィネス…』
「ガーランドは玄街を…よく知っている…知っているんだ。」
彼は最も困難な道を選ぼうとしていた。
「僕はガーランドへ行きます。浮き船を追います。」
シェナンディは言った。
「行ってどうするつもりだ。これ以上禁忌を犯せば、どの領国もお前を受け入れないぞ。そればかりか命を落とすかもしれん。こめかみの傷がいい証拠だ。どこでも禁忌破りには容赦がないことを忘れるな。リンチにかけて殺すのをこっから先も厭わぬ連中もいるんだ。お前を簡単に許すつもりはないが、死ねとは言わん。」
シェナンディは椅子に腰を下ろし、どうにもならんというふうに首を振った。
「お前が死ぬと、マヤルカはこの世で唯一の同じ不幸を背負った者を失う。それはもっと辛かろう。できることならお前は隣の領国で静かに暮らせ。そして彼女の支えになってくれ。手紙を送ってやってくれ。私の願いはそれだけだ。」
カレナードは訊いた。
「彼女はどこへ…。」
フロリヤが「しばらく北部のオールトンの親戚に。」と答えた。
シェナンディは涙をこらえているようだった。
「魔に遭ったのだ。玄街という魔は私達から幸せを奪う、ほんの少しの隙をついてな。マヤルカ…あれの母親になんと言えばいいのだ。娘がよりにもよって、こんなむごい目にあわねばならんとは。」
マヤルカが決然と姿を現した。
「お父さま!私もガーランドへ行きます。カレナードと一緒に行くわ!止めないで下さいね。オールトンへ行ったって、私には何にもならない。何の意味もないわ。」
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