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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第8章「刃(やいば)の夏」

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第8章「刃(やいば)の夏」23 恐るべき恋

マリラ・ヴォーが静かに、だが、圧倒的な存在として誇り高く鎮座していた。真珠色の光に包まれた女王。
カレナードの思考回路はもはや動いてなかった。リンザの声が虚しく響くだけだった。
『それはそれ、これはこれで分けなきゃ。グチャグチャよ』
ペンは彼の指から滑り落ちた。
V班の部屋は静かだった。ヤルヴィは儀仗行進の練習に出ていた。ミシコはミンシャに会いに行き、アレクとシャルはS班の部屋へ将棋をさしに行ってた。キリアンはベッドに腰掛けてなにやら読みふけっていた。
カレナードは仕舞っていた秘密を解いた瞬間、喜びと恐れに引き裂かれていった。体の内側で血流が激しくうねり、瞼の裏が熱くなった。彼は涙をこらえるため上を向いた。
「分ける…。扉のこちらと向こうを分けて置いておくのか…。どうやればいいんだ、いったん開けた扉をどうやって閉めるんだ、リンザ・レクトー」
焦がれるようにマリラを求め続けていたことを認めた瞬間、強烈な思慕が湧き上がり、彼の心臓は早鐘のように打っていた。
ガーランド乗船時、石のように冷たいマリラの態度に一度は恋心を失った。
しかし、それは燠のように燻り続けた。
生き脱ぎでマリラがカレナードの名前以外の記憶を無くしたことにショックを受けても彼は諦めてなかった。女王代役の時も、彼女に怒りを覚えたときも、自分が女王の特別な存在ではないかと秘かに感じていた。紋章人がたとえ女王の奴隷を意味したとしても、彼が積極的にそれに抗わなかったのは、彼女との特別な関係を無くしたくなかったからだった。
彼はかすかな声で女王の名を呼んだ。女王の代わりにキリアンが振り向いた。
告白文を書いているはずの紋章人は、両腕でその身を抱きしめていた。ゆっくりとキリアンに向いた首筋が艶やかに伸び、唇は僅かに微笑んでいた。そのくせ、眉には苦悩が滲んでいた。
キリアンは話しかけるのをためらった。
マリラへの恋心に染まったカレナードの眼に、熱と同時に得体の知れない苦しみが宿り始めた。
「それはそれ、これはこれ…。どうやっても分けられない…」
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