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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第8章「刃(やいば)の夏」

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第8章「刃(やいば)の夏」21 宵のベランダの音楽

2人は女子訓練生棟の前で別れた。別れ際にカレナードは訊いた。
「僕が灰かぶりのように見えたのは、ソカンリのせいだと」
リンザはカレナードの耳元に唇を寄せて言った。
「そうよ。踊り比べの優勝者があんな女に振り回されてたら、あたしのプライドが疼くわ。次に腑抜けているあなたに会ったら軽蔑するわ」
Y班の窓辺からミンシャが見ていた。
「ンフフフ。なにを話しているンだか」
カレナードは見られているとも知らずに言った。
「僕を励ましてくれたのか、リンザ」
リンザは細い眉を少し上げ、ひらりと駈け出して女子棟へ消えていった。
月明かりが天蓋の上から降り注いでいた。草叢に虫の声が響き始めた。男子訓練生棟では、ヤルヴィがベランダに出て、新しい曲を練習していた。
故郷への手紙を書き終えたシャルがやって来た。
「ここ、暗くないか」
ヤルヴィは目を閉じて弾いていた。
「問題ないよ、屁の河童」
「お前、かなり口が悪くなったぞ。兵站部の古参の口癖が移ったんじゃないか」
「うるせえ!」
「荒れてるねえ。カレナードといい、ヤルちゃんといい、最近ヘンだよ」
「あっち行ってよ、新しい儀仗行進の練習は明日からだから、マスターしておきたいんだよ」
「次の調停開始式はまだ先だろうに」
「様式を全部変えるんだ。オスティア領国の調停開始式は1ヶ月後だけど、準備があるだろ」
「おっと、カレナードだ。おかえり」
2人は4階から手を振った。カレナードは大きく手を振りかえした。シャルが言った。
「何か良いことあったみたいだ」
「早く告白文を書いてすっきりするといいのに」
「言ってやれよ。ヤルちゃんのお願いならカレナードは素直にきくんじゃないの」
「シャルはどう思っているのさ」
「俺は告白文よりもカーテンの件が気になるね。B監で彼の何かが変わったんだ」
「B監って、どんな所さ」
「俺はよく知らない。情報部へ行ってるハーリに聞いてみろよ。明日は軍楽団で会うだろ」
話しているうちにカレナードが部屋へ上がってきた。航空力学の復習をしていたキリアンがノートを渡していた。アレクが加わって雑談を始めた。シャルはそれを眺めていた。
「やっぱり良いことがあったようだ。彼が笑っているとホッとする」
ヤルヴィはフィドルを構えて、弓を当てた。弾きながら、今夜もカレナードの肩が見られると思った。そして、そのとおりになった。
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