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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第8章「刃(やいば)の夏」

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第8章「刃(やいば)の夏」20 リンザ・オン

20分後、リンザは食堂でレバーパテをパンに塗っていた。
「付きあってくれてうれしいわ。1人寂しく携帯食を食べるなんて耐えられない。仕事なら別だけど」
「君の言葉は裏表がないんだな」
「自分を偽ろうとは思わないわ。つまらないもの。あなたはどうなの、カレナード・レブラント」
「君には全部見られたから、白状しようか」
リンザは野菜スープを飲み込んで、頷いた。
「白状して!」
「…偽らざるを得ないんだ、どこか肝心なところで」
「体のせいなの」
「それはあるだろうな。ぎくしゃくして、つい無理をするし…。僕は不器用なところがあるんだ」
「前にジルーが言ってたわね、あなた、頑固者だって」
「うん…」
カレナードはそれきり黙り込んで、スープ皿に突っ込んだスプーンを握りしめていた。
リンザはもう一度レバーパテをパンに乗せた。たっぷり乗せた。それをカレナードの目の前に突き出した。
「複雑なのは分かったわ。しっかり食べて元気出しなさいな。踊り比べであたしに勝ったんだから、ソカンリに袖にされたくらいで腐って欲しくないわね」
「知ってたんだ…彼女のこと」
「あなたが収監されていた間に、あの女、鞍替えしたの。ガーランドに居残りたくて、有望な新参や古参に取り入ってるの有名なんだから。馬鹿よね、実力で勝負しなくちゃ。第一、目をかけてもらうなら部長か副長クラスを狙うべきよ」
「艦長といい仲してた君がそう言うのかい」
「それはそれ、これはこれ!好いた惚れたと仕事は分けなきゃ。たいがいの女の脳ミソは厄介で、分けないとグチャグチャになるのよ。これ極意だから、教えておくわ」
「僕は男なんだけど。リンザ」
リンザは淑女の仕草で首を振った。
「そうね。でも素敵な女の体を持っているんだもの。前にも言ったわよ。あなたの精神が体の影響を受けてないわけがないって」
「そうかな」
「このこと、肝に銘じておいて。あたしより胸が大きいのよ、油断しない方がいいわ。いっそ今の内に体の隅々までチェックして備えておくべきね。これから先、元に戻ったら恋人に役立つんじゃないの」
リンザの率直な物言いに面食らいつつも、カレナードは不思議な安らぎを覚えた。
彼をしっかり男と認め、さらに女の部分も気遣った人間は、女子Y班とマイヨール教授以来だった。男たちはカレナードを男扱いしてるだけで、それ以上はどうしていいか分からない。そしてカレナードはマヤルカの前では強がってみせるしかない。
彼は、自分の女の部分が孤独だから、カレナード自身にさえかえりみられない存在だから、このように辛いのかもしれないと感じた。
リンザが彼のためにもう一度パテを塗っていた。
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