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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第8章「刃(やいば)の夏」

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第8章「刃(やいば)の夏」14 兵站の寄生虫

カレナードは続きを述べた。
「高度3000mを境界にあらゆるレーダーがそれ以上の空域を感知しません。レーダーが捕えられない波長の世界です。そしてヴィザーツの飛行用エンジンもアナザーアメリカンのそれも無力になり、失速と墜落の悲劇を招く。ですから、3000m以下と以上では、大気に含まれるエネルギー系ナノマシンの濃度あるいは種類が大きく違う状態にあると考えます。それにはサージ・ウォールが何らかの役割を担っているとも。サージ・ウォールの高さもだいたい3000mですから」
カンナが訊いた。
「君が航空部長の立場にいたら、それを検証する手立てをどう用意するの」
「無エンジンの探査用グライダーを上昇気流に乗せるまで飛行艇で曳航し、まず3000mの境界面の状態を確認します」
スティレの突っ込みが来た。
「おいおい、いきなりグライダーとは豪勢だ。俺なら気球にするところだ。お前、航空部の予算を知らないな」
「そんなに値が張るのですか、グライダー」
「そりゃ、性能がいいからな。ただ気球もグライダーもすでに失敗しているのさ、残念ながら。兵站部の俺の意見は、あれだ、予算不足だよ。やるならトールを使うくらいじゃないと、結果は出ないさ」
「トール・スピリッツを…一機潰すことになりますよ」
「サージ・ウォールも絡んでいるような状況だ。金をかけずにやろうというのが間違いなんだよ」
カレナードはしばらく黙っていたが、いきなり切りだした。
「兵站の寄生虫って、どういうことです」
カンナがくくっと笑った。スティレが格子から歯をむき出した。
「お前!それを言うとは、顔に似合わず性格悪いんじゃないか」
「この体の見物料です」
「ほっほう!ではデコルテの線をもっと見せてくれ。そしたら答えよう」
カレナードが髪を後ろへやると、兵站の寄生虫は満足気に腕を組んだ。
「よしよし。兵站てところは地味に見えて、実はガーランドの心臓部さ。腹が減っては戦は出来ぬ。装備がなくても同じこと。兵站舐めるんじゃないよ。
ところが、そっち方面のセンスがないアホが少なからずいるのは仕方がないとして、奴らの中には物資の横流しを平気で頼みに来るのが腹立たしい。そこで俺が何したと思う、カレナードちゃん」
「腹黒いことでしょう」
「へへん、俺は水増しワインや安物毛糸の靴下を売りつけるような貧しい商いはしない。正真正銘の最高級品を提供してやるのさ」
カンナが間髪入れずに続けた。
「相場の20倍でね!」
スティレはまったく悪びれなかった。
「すり寄って来る奴に限って、金銭感覚がいい加減なんだ。儲けた分は俺の自由裁量さ。誰が呼んだか、兵站の寄生虫。いいじゃないの、寄生虫。兵站のコード開発費用は予算が少なくてツラいっつーの」
監視員が正座の終わりを告げた。カレナードはゆっくりとうつぶせになって、体を伸ばした。カンナが言った。
「うまく体を隠すのね。スティレが悔しがっている」
カレナードはうつぶせのまま言った。
「それがばれてここに収監ですか」
「違う違う!そんなチンケな罪で逮捕されてたまるかってんだ!俺の罪は聞いて驚け、結婚詐欺さ!告白文は15枚も書いたんだ、褒めてくれ!1枚につき1字で『もうしわけありませんでしたッ!』ってね。ゲヘヘヘヘッ!」
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