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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第1章「禁忌破り」

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第1章「禁忌破り」25 追放刑

ベスティアンが言った。
「ミシコ、一緒にガーランドに行けなくて残念だ。カレント家の男としてしっかりやってこい。」
アナも声をかけた。
「新参訓練生の間は帰ってこれないわ。元気でいるのよ。」
ヴィザーツの両親は息子の門出を祝福した。その光景はカレナードにとってまぶしすぎた。彼は毛布で顔を覆った。ミシコの声が聞こえた。
「あいつが飛行艇を始動させたって本当かい。起動コードを使ったのか。」
バンスが小声で注意していた。
「そのことは誰にも言うなよ。確かめてからでないと大問題になる。アナザーアメリカンがコードを知っているとは、信じがたい。」
ミシコが出立し、静かになると疲労が一気に押し寄せた。依然として体中が痛かった。アナが差し出した甘くて苦い茶を飲むとカレナードは朦朧と眠りにおちた。マヤルカも静かになった。眠りのところどころでミシコの両親の声が聞こえた。
「…オルシニバレ市ヴィザーツ査問委員会…緊急招集して…領国府通達……違反事項第12条に相当す……
玄街…干渉とはいえ……かわいそうに…… おそらく玄街の首領…あの女…グウィネス・ロゥ……特殊なコードだ…特殊だ…ガーランドの施療棟の…ドクトル・ティンでも…解くには数年…
………数の問題が…少なすぎる……… だめだ…各領の内政には……事態は深刻かも……マリラさまに……
…血が流れることに……避けねば…それでも…かわいそうに…ミシコと同じくらいの年よ…
……生誕呪が偶然……可能性…ゼロではないにしても……アナザーアメリカの…ルールは変えられない……」
カレナードとマヤルカは翌朝の夜明けにヴィザーツ屋敷を出された。それぞれ領国の役人が付き添い、マヤルカは自宅軟禁、カレナードは出資寮の反省室に閉じ込められた。寮の紋章入りのバンドは早々に取り上げられた。
2日後、領国府は対ヴィザーツ令違反の罪でマヤルカをオルシニバレ市からの追放処分にした。カレナードはもっと重く、オルシニバレ領国からの追放だった。反省室を出た彼は重罪人でしかなかった。
冷ややかな軽蔑とあざけりに耐えながら荷物を取りに監督生の部屋に向かうと、テイトが新しい監督生と共にカレナードの荷物を放り出していた。
「見損なったぜ。お前のせいで出資寮の評判はガタ落ちだ。早く消えてくれ。」
カレナードは黙って荷造りを終え、寮監と寮長が待つ事務室へ向かった。そこで一通の封書を手渡された。それにはシェドナン奨学生資格を与えると記されていた。
「僕にはもう必要ありません。」
彼は封書を破り捨てようとした。寮長はそれを押しとどめた。
「持っていなさい。他領国で何かの役に立つかもしれん。」
カレナードは寮長の最後の気遣いに頭を下げ、それをポケットに入れ寮を後にした。シェナンディ家に向かう道筋で石つぶてが飛んできた。それはこめかみに当たり、皮膚を破いた。彼の予想通りのことが起こっていた。そのうちにあちこちから夕暮れの闇に乗じて、罵声と小石が浴びせられた。大急ぎでその場を逃れ、一目散にシェナンディ家へと走った。
ここを故郷にしようと決めていたのに、居るべき故郷ではなくなった。彼の居場所はもうどこにもないのだ。
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