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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第8章「刃(やいば)の夏」

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第8章「刃(やいば)の夏」7 拠点潰し

アナザーアメリカを調停の地たらしめ、アナザーアメリカンのあずかり知らぬ場所で玄街ヴィザーツと闘い続けて来た100万人のコード遣い。その一員に加わり自分の居場所を作ることと、トール練習機の操縦席で得意になることとは全く違うのだ。
兵站部の補給統括副長スティレ・ルケと情報部分析局中佐カンナ・ハーレが囚人服を着ていても、カレナードと決定的に違うのはそこだった。
二人は確固たる居場所があり、居場所を得るための努力は学ぶべきことだった。
カレナードの肩に溜まっていた収監のこわばりが落ちていった。
「新参訓練生の飛び級をやすやす認めるほど航空部は甘くない…。僕はすっかり思い上がっていた、即戦力になりたがっていたんだ」
スティレがそんなカレナードを見た。
「新参さんよ、ちょっとは素直な気分になったかい」
新参訓練生はホッとしたようにうなずいた。
ガーランドはベアン停泊の一日目には、さっそくベアン市周辺に散らばる玄街の拠点を叩き潰した。ガーランド警備隊と兵站部工作セクション、ベアン・ヴィザーツ屋敷の精鋭による共同作戦は電撃戦の様相で、二日目には情報部がもう現場で情報収集にあたった。その目的はミルタ連合領国から周辺緩衝地帯おける玄街の拠点把握だ。探索は入念に続行され、作戦参謀室には報告書と指令書が山と積まれていった。
トペンプーラが職場に復帰したのは、ベアン停泊の三日目だった。
ベアン市バイエン区外の北街道上空にひっきりなしに貨物飛行艇が行き交う音を耳にしながら、トペンプーラは作戦参謀室に出向いた。
「補給が遅れていますネ…」
彼は車椅子を使っていた。
マリラが先に来ていた。
「具合はどうか、トペンプーラ」
「意外にも脚に影響が残りましたが、全快は早いとウマル医師は言ってマス。女王に御心配いただくとは、ありがたいやら情けないやら」
「そなたに死なれては困る。命令違反の紋章人を厳罰にしたのは私だ」
「特B入りを命じたのは女王でしたか」
「艦長は独房で十分と言ったが、紋章人は頑固者だ。彼にはいい薬になるだろう」
「マリラさまは私情を挟まなかったのですネ」
マリラは穏やかだった。
「ガーランドは私情で動かしてはならぬ。私は常にそうである。違うか、トペンプーラ」
「おっしゃるとおりです」
淡いグレーのスーツを着て髪を束ねた女王は微笑んだ。彼女は車椅子を押した。
「女王!」
トペンプーラは制したが、女王は軽快に進んだ。
「さあ、位置についたぞ。情報部副長の見解を聞こうではないか」
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