挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第8章「刃(やいば)の夏」

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

271/388

第8章「刃(やいば)の夏」5 告白の書

午後10時に監視員がカレナードに清拭コードをかけ、毛布を渡した。
彼はけばだった毛布を体に巻きつけ床に横たわった。とにかく眠ろうとした。脳裏には目まぐるしい1日のことが次々と浮かんでは消えた。
格子で打った傷が痛んだ。トペンプーラがそれ以上の傷を負っていて、それが自分の身勝手の結果だと受け入れなければならなかった。
しかし、気持ちの整理はいまだ出来ていなかった。薄暗闇の中で彼は泣いた。
朝6時にバケツを持ってホールに出された。バケツの中身を汚物孔に入れると、監視員が彼とバケツに強い清拭コードをかけた。彼は自分の周りに半透明のグリッドが立ち上がるのを初めて見た。このようなときに限って、なぜ見えるのかといぶかった。監房に戻ると小さな箒と雑巾を渡された。
「房内を掃除するんだ。丁寧にな。コードは禁止だ。自分の手でやれ」
カレナードはひたすら拭いた。鏡のような床に自分の姿が映り込んだが、それはやがて意識の外に消えた。彼は床を磨くのに没頭した。もう監視員に電気棒を当てられるような悪態はつかなかった。しかし、この日も、翌日も、彼は告白文を書かなかった。
懲罰を終えた者達が次々に去り、残ったのはカンナとスティレ、カレナードだけになった。
スティレが天窓を見上げていた。
「ああ、ベアン停泊が終わっちまう。ベアンのヴィザーツ屋敷に従妹がいるのに」
「スティレ、それはあなたの良い人なの」
「いいや、親類に会うって言えば下船許可が出やすいだろ。今回は羽を伸ばしたかったのさ。あんたはポーの鉱泉で酒を抜いたらどうだい」
カンナはスティレを無視してカレナードに話しかけた。
「レブラント君、告白用の紙が真っ白ね。収監期間内に書かない場合は、折りたたんで黒いケースに入れたのを首から下げることになるわ。かっこ悪くてよ」
カレナードは正座の最中だったが、カンナの問いに答えた。
「もう少し気持ちが落ち着いたら、整理出来たら…書きます」
「早くそうなりなさいな」
スティレが割って入った。
「酔っ払いのカンナさんも1回目の収監では告白文が書けなかったんだってよ」
「ちゃんと書いたわよ」
「今回で収監6回目だろ。もう情報部どころかガーランドに居られないんじゃないの」
「ハッハー!馬鹿にしないでよね。情報部アナリストの中でも凄腕のカンナ・アーレを下船処分にするものですか!」
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ