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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第8章「刃(やいば)の夏」

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第8章「刃(やいば)の夏」1 夏のキス・その1

第8章に入ります。
カレナード・レブラントの罪は重かった。
だが、彼は自身の罪からは目をそむけ、ただ、後ろに回った両手の不自由を恨んだ。
処分が決まるまでの数時間、彼は取調べ室の壁に繋がれ放置されていた。
ベアン市周辺の玄街襲撃作戦が急ピッチで練り上げられ、警備隊と情報部特殊工作隊は作戦準備に余念がなかった。その緊張感が取調べ室に届くことはなかった。
静かな取調べ室で、カレナードは夏至祭からの短い栄光の日々を振り返った。この4週間で彼の能力は新しい段階へと目覚めていた。天候と気流を読んだ正確なコース取り、機体に負荷をかけない操縦、遠距離飛行でも集中力は切れることなく、緊急事態訓練は冷静な度胸で切り抜けた。恐れはなかった。むしろ鋭くなっていく感覚に快感を覚えていた。
「飛行艇の完熟飛行は一番手でやってのけた…。上空2950mの限界空域だって悠々クリアした…。僕は新参の中で誰よりも早くトール・スピリッツ単独飛行の許可をもらった…。皆が認めてくれた…」
彼は正しい事をしたと無理やり思い込んだ。傲慢さが彼に宿っていた。
「トペンプーラさんを助けて、何が悪いんだ」
何度もトペンプーラのグライダーめがけて加速したあの感触を思い起こした。彼にはグライダーの航跡がはっきり見えていた。そして玄街輸送機を退ける進路も。
それに続く不名誉な展開が砕けた鏡のようにバラバラと彼の脳裏に落ちていった。そこになぜかソカンリ・ジカの姿も混じっていた。アーモンド形の瞳が初夏の輝きを放っていた。それは夏至祭後の航空部で気鋭の活躍を見せた自分の喜びと重なって、彼の眼を眩ませていた。
「命令違反なのは分かってるさ。でも、あの時、僕が行かなきゃならなかったんだ!」
顔を上げると後ろの壁に繋がれた手錠がガチャリと音を立てた。
再び頭を垂れると、ソカンリとデートした日の光景が瞼の裏に広がった。機関部のメンテナンス甲板から見おろした大山嶺、乾いた夏の風。彼女にせがまれてキスをした、友人と恋人の中間のようなキスを。マリラとは全く違う口づけを。
突然ドアが開き、ドルジン教官が入ってきた。
「立て、レブラント!」
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