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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第7章「玄街カイエンヌ」

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第7章「玄街カイエンヌ」31 絶体絶命

練習機は最大速度に達した。ドルジンとガーランドの管制塔から制止命令が飛んできた。
「こちらドルジン機。レブラントはコースを左寄りに取って帰投せよ」
「ガーランド第1管制塔より。トール・スピリッツ6機、緊急発進。訓練機は訓練コースより20km東に全機退避せよ。レブラント訓練生には撤退命令を告げる」
カレナードは言うことを聞かなかった。
トペンプーラの危機を前にして、グライダーと輸送機の間に割って入るのが最善だと思い込んでいた。誰にとっても危険極まりない視野狭窄の状態だった。
オープンになった通信回線に声が入り乱れていた。
「こちらニコル・ブロス機モスワン、了解した」
「モスシックス、ホーン・ブロイスガー機、了解した」
「ヤッカ隊長機、第1甲板より発進」
「キリアン・レー機、モススリー、了解。カレナード、命令を聞け!コースを空けるんだ!」
「カレナード、こちら管制のミシコ・カレント。3分でヤッカ隊長機が行くぞ。邪魔だ、どけ」
カレナードは、中型輸送機から銃撃の火花が散るのを確認した。
「だめだ、キリアン、ミシコ!情報部副長がやられてしまう!」
キリアンは歯軋りした。
「あいつ!英雄気取りか!夏至祭以来の絶好調がそう続くわけないのに!馬鹿野郎ッ!」
トペンプーラは覚悟した。いざとなれば装甲スーツのパラシュートを使う手が残っていたが、輸送機から至近距離で狙い撃ちにあえば生存は難しかった。
「ヘルメットがあっても即死デス」
彼は出来るだけ広い空間へ出るコースを取った。もう肉眼でモスツーが突っ込んでくるのが見えた。
「アナタは独善者ですヨ、カレナード!」
グライダーと輸送機の距離は1kmと少ししかなかった。
この間にカレナードがトール・スピリッツをうまく滑り込ませたとしても、その速度から発生する衝撃でグライダーも輸送機も無事ですむとは思えなかった。
彼はオープン回線に叫んだ。
「ティゲル・ピグス!でかい馬鹿が突っ込んでくる!このままでは無駄死だ、離れろ!」
ティゲルはティゲルで聞く耳など持たなかった。
「ガーランドめ!死なば諸共ッ!」
練習機モスツーが目前に迫った。トペンプーラは息を吸い込み、衝撃を最小限で受けるため機首をやや上げ、がくりと右へ反れた。
その瞬間、モスグリーンの巨大な機体が轟音と共にグライダーと輸送機の間を抜けた。トペンプーラの唇から叫びが漏れた。
「南無三ッ!」
グライダーを衝撃波が襲った。ついで乱気流が機体の装甲を剥がすかのように打ち付けた。グライダーは気流に揉まれながら一気に高度を上げ、嫌な軋みに揺れ続けた。穴のあいた翼は限界が近かった。
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