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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第7章「玄街カイエンヌ」

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第7章「玄街カイエンヌ」29 復讐の鬼

テレマンは悠々と言った。
「それくらい我々はアナザーアメリカンなのだよ。治外法権が有効と思ったかね。馬鹿言っちゃいけないよ、トペンプーラ。
我々が屋敷を解放しているからこそ、ポーの人間の信頼があるんだ」
「では、馬を一頭貸して下さい。ワタクシは明日の夜明けに大山嶺に向かいます。グライダーを岩山に隠してあります。それをガーランドに持って帰らねば」
「なら、牧童にでも化けていけ。オンヴォーグを贈りたいがどうかね、受け取るかい」
トペンプーラは頷いた。
「若輩者ですから」
「ふっ、食えない男よ」
テレマンは手を伸ばしてトペンプーラの頭上に置いた。
「オンヴォーグ。生きてガーランドへ帰れよ、若造」
夏の夜明けは早かった。午前4時に屋敷の裏手に繋がれた馬の手綱を取ったとき、朝焼けが始まった。
トペンプーラは羊追いの軽装で、ゆっくりと羊毛工場に近い道をたどっていた。早くも工場に羊毛を持ってくるトラックや荷馬車とすれ違った。
人々は起き出して、暑い昼間になる前の一仕事にかかっていた。警察の姿はまだなかった。検問さえなかった。
トペンプーラは郊外へ出ると、馬を速足にした。玄街の気配は明らかではなかったが、あのティゲルが簡単にゴブラン達の仇を逃がすはずがなかった。
「仕掛けてきませんネ。しかし…」
以前に水をくれた牧畜の一家の近くを過ぎる頃には、朝日が真横から長い影を投げかけた。
馬は荒れ地を登っていった。馬上のトペンプーラは僅か2時間でグライダーの隠し場所に着いた。
彼は起動コードを唱えた。
「dicourvertdèeupettir」
アンカーの発煙筒から狼煙が上がった。それを標しにして小岩に擬装したグライダーにたどり着いた。1時間後、彼は再び装甲スーツを身につけていた。
グライダーの噴射装置が唸りを上げた。試運転に少々時間を割いたが、晴れた朝の空にトペンプーラは飛び立った。
馬は騎手が居なくなったのを悟り、斜面を駆け降りていった。
トペンプーラはガーランドの位置を計算した。
「ベアンの北西、約160kmに到達しているはず。天候が変わらなければ、小一時間で接触できるでしょう」
眼下にミルタ連合領国西端の丘陵が起伏豊かに広がった。ところどころに壁のように切り立った奇岩の光景が続いていた。山肌からの上昇気流が心地よく翼を押し上げた。
グライダーの高度は200m近く、地上からは小鳥に見えた。
突然、大きな影が迫った。
「くっ!」
風圧がトペンプーラとグライダーを襲った。
右後方の丘陵地帯からいきなり中型輸送機が接近してきた。汎ミルタ空輸の整備場にあったのとは色違いで、ミセンキッタ領国の国章が胴体にあった。振り返ると輸送機のコクピットが見えた。怒りに歪んだティゲル・ピグスの暗い顔があった。
「おのれ…ガーランドのイヌめ…切り刻んでやる!」
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