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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第7章「玄街カイエンヌ」

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第7章「玄街カイエンヌ」25 玄街のリア・ゴブラン

トペンプーラは杯をあおった。
「テレマン老師、ガーランドはあなた方のことを忘れてはいません。現にマリラさまとあなた方との間にワタクシの知らないルートをお持ちでしょう」
「浮き船では2名のアナザーアメリカンを新参訓練生に受け入れたとか。それが本当なら、空のヴィザーツは変化を望んでいるのではないのかね」
トペンプーラはギクッとした。テレマンの言葉に何かが引っ掛かった。
「変化を望んでいる…」
「儂はそう感じたね、情報部副長殿。
外側から見れば、浮き船はまことに狭い世間だ。この世のインテリジェンスを結集していようと、ガーランド内部が澱んでいてはいかんよ。
ナノマシンの垢を落とすだけが浮き船ではなかろう」
「その言葉、しっかり覚えておきましょう」
テレマンはぱちんと指を鳴らして、年嵩の女を呼んだ。
「こちらの御仁に胡桃と山羊のチーズを。それから彼が必要なものを揃えてやってくれ」
トペンプーラは頭を下げた。テレマンはにやりとした。
「では、情報部副長殿。マリラさま宛の新規コード使用許可申請状に推薦のサインをいただきたい」
「さすが海千山千…」
ガーランドの男の言いように年嵩の女は小さく笑った。
翌日、トペンプーラは貸し邸宅会社の社員証をぶら下げ、夏の作業服を着た。
それらは全てポーのヴィザーツ屋敷が用意したものだった。
夜のうちにテレマンの指示で山手の電線に仕掛けがつけられ、玄街ヴィザーツが借りた物件を含む一帯は朝方から停電になった。
トペンプーラを含むポーの屋敷のヴィザーツ達が復旧工事に訪れたのは、午前9時だった。トペンプーラはまんまと玄街ヴィザーツの貸家に入った。
賃貸契約はリア・ゴブラン名義で、指揮官は彼女だろうと推測した。
彼は配電盤を手順通りに見ていった。さらに家じゅうのコンセントをチェックした。家の間取りはすぐにトペンプーラの頭に刻まれた。
ゴブランともう1人の若い男は黙って作業を見ていたが、そのうちに男は用事に出ていった。残るはゴブランだけだった。朝の光の中で、しっかりした顔立ちをしていた。
「停電の原因は何なの」
「伸びた若竹が電線の邪魔をしたらしいです。珍しい事故です」
「電話が使えなくて困るのよ」
「そうですね、ただいま電話のチェックをします。他の電源はもう使えるはずです。どうぞ試してください」
ゴブランはふうとため息をついて、台所の電灯へ向かった。
トペンプーラは胸ポケットから盗聴器を出して、すばやく電話に取りつけた。受話器を持ち上げると、いつもと変わらない音がした。彼はチェック表に印を入れた。受話器を戻したとたんに電話は鳴った。
ゴブランがカツカツと音を立ててやって来た。
「ティゲル!」
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