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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第7章「玄街カイエンヌ」

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第7章「玄街カイエンヌ」21 スパイ&スパイ・その2

トペンプーラ出立の少し前、クロードは買い物に出かけた。彼女は店先でトペンプーラと別れの挨拶を交わした。
「また寄ってくださいね。ヨースのおじさま」
トペンプーラはクロードを見送るために一歩軒先へ出て息を飲んだ。
クロードが歩く先にティゲル・ピグスの暗い顔があった。彼は確信に満ちた様子でヘット商店を目指していた。
クロードと彼の距離はわずか20mだった。トペンプーラは咄嗟にクロードの背に向かって叫んだ。
「お嬢さん!たいへんだ!お父さんが倒れた!!」
クロードは振り返った。トペンプーラはなおも叫んだ。
「早く戻って、お嬢さん!」
店の奥にいたドミはトペンプーラが指で例の暗号を示すのを見た。芝居をしなくてはならなかった。彼は店の床に倒れてみせた。トペンプーラはクロードが走ってくるまで店先で待った。
近所の店から何事かと人が集まり始めた。クロードが店に走り込むと、トペンプーラは一緒にドミの近くに行った。
ドミは娘を見上げた。
「俺は急病で、しばらく店を閉めんといかん。クロード、避難用の鞄を使うぞ」
「任せて、パパ」
クロードは隣の金物店の店主に振り向いた。
「父を医者に診せなきゃ。そこの電話でタクシーを呼んで下さい。後で店の戸締りをお願いします」
トペンプーラがドミの脈を測るふりをしていると、人だかりの向こうをティゲル・ピグスがちらりと様子をうかがってから通り過ぎていった。
クロードはきびきびと動いた。
「ヨースさん、父についていてください」
クロードはものの3分で持ち出し鞄を事務室から取り出し、昨夜贈られたブローチをポケットに忍ばせた。トペンプーラはドミを助けてタクシーに乗った。クロードはトペンプーラの鞄をタクシーに積むのを忘れなかった。
3人がシートに落ち着くと、タクシーはティゲルが向かった方向とは逆へ走り出した。
ティゲルは少し先の木陰でタバコを吸って様子をうかがっていた。金物店の店主がヘット商店を戸締りして鍵をかけ終わるのを待っ店主に近づいた。
「ここの種物屋に用があって来たんだが、彼はどの医者へいったのか教えてくれないか」
「あんた、急病人に商売の話は止めときな」
「いや、見舞いに行きたいと思ってね」
「チタニー大通りのハル医院じゃないかね。もともと丈夫な男だから、すぐ帰ってくるかもしれないよ」
ティゲルはぶっきらぼうに礼を言い、タクシーが去った方へ歩きはじめた。
タクシーはチタニー大通りで止まらなかった。河を越えて東へと走った。トペンプーラがそっと口を開いた。
「お嬢さんは手際がいい」
「用心しておくに越したことはない。」
クロードが余計なことをしゃべらないよう、父を止めた。
「倒れたばかりなのよ、声を出さないでちょうだい。ヨースのおじさま、私は詳しいことは分からないし知らないわ、そうでしょ」
トペンプーラはようやく微笑んだ。
「お嬢さん、これからヴィザーツ屋敷の高官であるモトイーにあなたとあなたのお父さんを託します。モトイーは信頼できる人物です」
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