挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第7章「玄街カイエンヌ」

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

251/388

第7章「玄街カイエンヌ」18 古巣のドアを叩く

女家主は慌てもしなければ騒ぎもしなかった。
「キラルさん、あたしに何か手助けすることはあるかい」
偽捜査官ギル・キラルは、砂糖と塩をひと匙ずつ入れた飲み物を大きめのコップに作って欲しいと頼んだ。女は続けた。
「医者はいるかい」
「いや、それより果物があれば助かります」
女が階下へ戻るや、トペンプーラはバジラの縛めを切り、鉄鎖の錠前を小道具で外した。バジラは何度もゆっくり伸びをした。
「マスター。きっとあんたが来てくれると思っていたよ。ああ、あちこち痛い」
「あなたをここから連れ出します。服はどうしました」
「たぶん、この棚のどこかだ。あの野郎、几帳面にたたんでくれていた」
バジラはよろめきながらも、立ち上がった。その後ろ姿にトペンプーラは清拭コードをかけた。バジラが服を着るのを手伝っているところに、家主がコップと桃を持ってきた。
「キラルさん、それでティゲルが帰ってきたら、あたしはどうすればいいかね」
バジラが桃を貪り食う横で、トペンプーラはまた微笑んだ。
「いつもどおりにしているのです。警察が彼を捕まえるまで、彼から家賃をいただいていてくださいネ。そうですね、ワタクシの名前を出して家宅捜索をしたと伝えておいてください。そして、見知らぬ男を連れて帰ったと。
あなたが知っているのはそれだけデス」
「ふん。それで、あたしの身に何かあったら、だれが責任を取ってくれるんだい。どこに申し開きしたらいいのさ」
「ベアンのヴィザーツ屋敷が責任を負います。心配は無用です」
女家主は無理やり納得したようだった。
「要するに、あたしはヴィザーツさまのお役に立ったということだね」
トペンプーラは親指を立てた。
「ビンゴ!」
数分後、タクシーはバイエン区に戻り、ヴィザーツ屋敷の正面正門で止まった。
トペンプーラはバジラをタクシーに待たせ、守衛に取次を頼んだ。
「行政局次官のモトイー氏に『ジルーが玄街のカイエンヌを持ってきた』と伝えてください。そう言えば、彼には分かるはずデス」
守衛は訝りながらも電話をかけている途中で、目の前の髭もじゃ男がガーランド情報部副長と気付き、敬礼を返そうとした。トペンプーラは彼を止めた。
「ワタクシはただの香辛料の仲買ビジネスマン。素知らぬままでいて下さい、さもないと辛い唐辛子をお見舞いしますヨ」
守衛と雑談しているところに、モトイーがやって来た。トペンプーラは挨拶抜きで、バジラの保護を要請した。
タクシーは再びトペンプーラを乗せて、正面正門から東門へとまわり、そこからある建物に横付けした。2人の男は静かに小さなドアを抜けた。
タクシーは、いつもより多めの運賃を支払われ、そっと門を出て行った。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ