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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第7章「玄街カイエンヌ」

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第7章「玄街カイエンヌ」17 バジラ救出

トペンプーラはバイエン交通局の近くで路面電車を降りた。郵便電信局に入り、市内用電話ボックスを使うために奥へ向かった。
電話の相手はティゲル・ピグスだった。呼び出し音が続き、中年女の声がした。
トペンプーラはティゲルの友人をよそおった。中年女はそこの家主で、ティゲルは3階に間借りしているのだったが、週に数えるほどしか帰ってこないと言った。女は「言伝があれば、お伺いしますよ」と気を利かしてくれたが、トペンプーラは断った。
「ティゲルは下宿の他に身を寄せる場所があるのでしょう。ポーの町あたりいいですネ。週に数回、下宿で何をしているのか…」
彼はタクシーを拾って、バイエン区外の北街道沿いのティゲルの下宿へと走った。ヴィザーツ専用飛行場の脇の道からは、低いものの管制塔が見えた。そこから遠くないところに下宿はあった。
トペンプーラは運転手に待っているよう頼んだ。下宿の呼び鈴を鳴らすと、電話で聴いた声がした。
彼は内ポケットから偽の警察手帳を取り出し、汎ミルタ連合警察庁の紋章を開いてみせた。
「ワタクシは私服捜査官のギル・キラルです。ただいまからティゲル・ピグス氏の部屋を捜索します。鍵をお持ちですね、家主さん」
中年女はムッとして、犯罪人を下宿させたりはしないと、肝の座ったところを見せた。トペンプーラは説得するように微笑んだ。
「容疑はね、誘拐ですよ。さあ、何も出てこなければ、あなたも安心するでしょう。彼の部屋へ一緒に行ってくれませんか」
2人は階段を上った。
家主が合鍵を回すと、正面の窓からヴィザーツ屋敷の北端の棟が見えた。窓の脇には双眼鏡が吊られていた。
「なるほど。ヴィザーツ屋敷内の仲間と合図を交わすには都合がいい部屋だ」
ティゲルの部屋は整頓されていた。机の引き出しを開けると、小さな紙片が机の下に落ちた。
トペンプーラは引き出しを閉める時、それを元の場所に挟んだ。
「一応、間諜の訓練は受けているようデスが、甘い」
彼は引き出しの隅のメモをしっかり覚えた。ポーの町の電話番号が一つ記されていた。
その時、洗面所のドアの向こう側から物音がした。家主は「ティゲルさん、いたのかい」と声をかけた。
今度は物音ではなく、くぐもった人の声がした。トペンプーラは鍵のかかった洗面所のドアに体当たりした。ドアはめりっと音を立てて外れた。薄暗い部屋の隅に彼が探していた男が転がっていた。
「やはり生きていましたか!」
バジラ・ムアは両手両足を縛られ、口には革紐が三重に巻かれていた。両足は便器に鉄の鎖で繋がれていた。彼はほとんど裸だった。
水を張ったバケツがあり、床にはパン屑が散乱していた。ティゲルが数日おきにここへ来て、水とわずかなパンをバジラに与えていたのだ。
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