挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第1章「禁忌破り」

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

25/388

第1章「禁忌破り」22 完了祭の夢幻

完了祭の最終日、ガーランドはオルシニバレ市の6区に近い郊外の街道沿いの上空、50mまで降下した。ガーランドの船底が迫り、アナザーアメリカンは皆ひれふすように膝を折り出迎えた。
船底から順番に多数ゴンドラが降りて、調停準備会の代表団が次々に船内へ乗り込んでいった。強風の中、カレナードとマヤルカはピーコックブルーのお仕着せに身を包み、ゴンドラに乗るのを待っていた。
「雨が降らなきゃいいんだけど。」
マヤルカは西オルシニ山脈から時雨が来やしないかと西北の山並みを何度も見渡した。白い衣装のフロリヤは一つ先のゴンドラに誘導された。彼女が乗ったゴンドラにいきなり時雨の前兆を告げる冷たい突風が吹きつけた。フロリヤの上半身が手摺りを超えて投げ出されるかと思った時、ヴィザーツの1人が彼女のベルトをつかんで引き戻した。フロリヤはその力強さと釣り合わない姿の少年警備兵に礼を言った。
「お名前を教えてください。私はフロリヤ・シェナンディと申します。」
年の頃は14歳に見える警備兵は黙っていたが、出し抜けに答えた。
「ピード・パスリだ。」
銀髪につり上がった緑の目をしたピードはフロリヤのベルトにワイヤーを通して手摺りと繋いだ。
「上に着いたら外してやる。」
それだけ言った。フロリヤは彼にそっと耳打ちした。
「あなた、大きい人ね。」
怪訝な顔のピードを残し、フロリヤはそのまま大宮殿へ誘導されていった。
カレナードは無事に役目を終え、思う存分女王を見た。マリラは頭を高く掲げ、真珠色のドレスに真紅の長いケープを垂らしていた。彼女は代表団1人1人と挨拶を交わして歩き、親交を持った。
威厳に彩られた美しさは10年前の思い出以上にカレナードを酔わせた。視線はずっと女王に釘付けだった。マヤルカがだんだん不機嫌になっていくのにも気づいてなかった。
大宮殿は透明な天窓を持っていて、拝謁式が終わる頃には時雨が通り過ぎた。陽が射した。ガーランドはコーラルピンクに染まり、人々は調停完了祭の幕引きを誇らしく行なった。カレナードとマヤルカはひと足早く帰途についた。まだ夕暮れには早く、時雨の後にしては暖かい午後だった。2人はすっかり無防備になっていた。
「素晴らしかったわ。女王さまがお姉さまに声をおかけになるなんて。ねぇ、あなたも見てたでしょ。」
いつもならすぐ返事があるはずだが、今日はない。
「あ…ええ、え、フロリヤさんの踊りですよね。」
マヤルカは彼のふくらはぎを蹴飛ばした。
「っんもう!何を腑抜けてるのよっ!あほ、バカ、まぬけっ。」
マヤルカはわざと知らない道へと歩きだした。祭りを終えた通りはどこも冬至までの日常を取り戻すべく、片付けを始めていた。あわててマヤルカの後を追うカレナードだが、まだ夢心地な気分が抜けてない。北街道から7区へ入ったはずだが、ヴィザーツ屋敷に隣接するそのあたりは高級住宅街で、彼には馴染みがなかった。
「お嬢さん、道は分かりますか。」
「しっかりしてよ。市内で知らない所があるなんて。」
「地図は一応覚えてますけど、この辺は来たことがないんですよ。それにヴィザーツ屋敷は入れませんし。」
「なんでヴィザーツ屋敷のことが出てくるのよ。ガーランドへ行ったからって…。」
急にマヤルカは言葉を失った。前方の生垣に挟まれた通りに5人の玄街ヴィザーツが立っていた。カレナードもそれを見た。
「まだ明るいのに、陽射しがあるのに…。お嬢さん、こっちへ。」
信じられなかった。白昼堂々と玄街が通りに出てくるなどありえなかった。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ