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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第7章「玄街カイエンヌ」

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第7章「玄街カイエンヌ」16 手掛かり

トペンプーラは窓から飛行場を見るふりをして事務所を回った。飛行機操縦教室のポスターが貼られていた。彼はひと目でおしゃべり好きと分かる若い女性社員に近づいた。
「操縦教室は定員があるのかい」
女性社員はビルベリーの焼き菓子のことを知っていたので愛想も良かった。
「ええ、一度にたくさん生徒が来たら練習機も教官も足りませんもの。ええと、フロイスさんでしたっけ」
「トロイスです」
「失礼、トロイスさん。あなたも操縦を習いますか」
「今の仕事が一段落したら、西メイスまで飛んで帰りたいんだ」
女性社員はにこっとした。
「大旅行ですね」
「ところで、最近こちらで知人が免許を取って、もう乗り回していると聞いたんだ。ティゲル・ピグスという名でね。知らないかい」
女性社員の眉が微妙に寄った。
「それが…ひと月ほど前に、悶着があったんですよ」
「あいつ、なにかやらかしたんだな」
「ご友人のあなたにこんなことを言っていいものかしら。」
トペンプーラは全く問題ないと先をうながした。
彼女は声のトーンを落とした。数週間前、ティゲルは軽飛行機を1台チャーターして荷物を運ぼうとしたところ、荷物の中から生き物のうめき声がしたというのだ。汎ミルタ空輸では中身の確認を要請したが、ティゲルが拒否したためチャーターは取り消された。彼は仕方なくその荷物を持ち帰った。
「もう気持ち悪いったらなかったわ。あれは動物なんかじゃない、人の声だったと思うわ」
トペンプーラは確信に満ちて言葉を添えた。
「それは男の声だった…」
彼女は小さくうなずいた。
「正確にはいつのことだい」
「夏至祭の4日前でしたから、先月の20日です。トロイスさん、私がこの話をしたことはピグス氏には内緒にしてださいな」
彼は路面電車に乗り換えて、バイエン区へ向かった。玄街の尾行の気配はなかった。
「ティゲルが飛行機で運ぼうとしたのは、おそらくバジラ・ムアに違いない。汎ミルタ空輸に提出していた飛行計画書では、ブルネスカ領国北西部の緩衝地帯への往復となっていた。軽飛行機ならベアンから半径650kmへ飛行可能ですから、そのどこかに玄街の拠点があるのでしょう。バジラはおそらくベアンで監禁されているはず…」
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