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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第7章「玄街カイエンヌ」

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第7章「玄街カイエンヌ」15 運命論者達

こうして事態は急変した。ベルは玄街間諜の情報を綴り、さらにアンドラ情報部長に語った。アンドラは手堅くまとめた文書をトペンプーラの私書箱に送ったのだった。
「やはりベアンのヴィザーツ屋敷には玄街の手の者が入り込んでいましたか。はっきりしているだけで4人…このうちの誰かがティゲル・ピグスにワタクシの単独行を知らせたのでしょう」
彼はアンドラの文書に再起動コードをかけた。文面は真っ白になった。さらに机の引き出しに入れて固定コードを唱えた。
他の手紙は灰皿の上で一つずつ焼いて処分した。
彼は椅子にもたれ、ベルの告白の一部を反芻した。
『一度だけ会ったグウィネス・ロゥの姿を私は忘れることはないでしょう。
暗い灰色の奥から炎が揺らめくような、恐ろしく魅惑的な眼差し。そして、サージ・ウォールから生まれたような激しい情熱が彼女から放射されていました。
それはガーランド・ヴィザーツとマリラ・ヴォーに向けられた憎悪と打倒する意志の塊でした。
ガーランドがアナザーアメリカンを大人しい羊に貶め、人間の発展の可能性を封じ込めている調停の秩序を、遠からず玄街ヴィザーツと玄街と目的を同じくする勢力の手で覆すと、グウィネス・ロゥは固く誓っていました。
私はその玄街からガーランドに送り込まれることも、自分の運命として受け入れました。
今、私が玄街を捨てるのも運命です。私は運命に逆らいません』
「運命論者デスね、チャンダル女官」
トペンプーラは天窓からの光が作る壁の陰を見た。
「光と陰…。マリラさまがいなければ、グウィネスという存在も生まれはしなかった。人の世に戦争を生むまいとしたガーランド女王と争乱の世を生もうとする玄街の首領。おもしろい…、2人はどこか似ています、その目的はまったく相容れないものなのに」
彼は立ち上がってから、ふと思い当たるように言った。
「そういうワタクシも運命論者ですかね」
それからチェストの中の小包を取り出し、地下室を出た。
「ティゲル・ピグスの足取りを確かめに行きマス。ヴィザーツ屋敷に乗り込むのはそれからデス!」
彼は変装のため部屋に戻り、1時間後には汎ミルタ空輸に向かう乗合タクシーの中にいた。
手には例の小包があった。汎ミルタ空輸の事務所には先日の案内人がいた。
トペンプーラはジンガ・トロイスの皮を被った。
「先日はお手間をかけましたな。いいものを見せていただいた。これはほんのお礼です、整備場の方々もどうぞご一緒に」
小包を開くと、そこには西メイス特産のビルベリーをふんだんに使った焼き菓子が並んでいた。案内人は珍しい贈り物に目を輝かせた。
「これはお気遣いをいたしましたな。せっかくだから、茶を淹れてこよう」
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