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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第7章「玄街カイエンヌ」

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第7章「玄街カイエンヌ」14 女王陛下のベル・チャンダル

一糸纏わぬベル・チャンダルのシーンがあります。
R-18要素につき、ご注意ください。
翌日、トペンプーラはバイエン区の電信局私書箱の中身をすべて自分の基地に移した。西メイスの偽装会社名義でやってきたガーランドからの通信といくつかの小包を整理した。
「ほう…。チャンダル女官はすべて喋ってくれましたか。ありがたい。マリラさまが説得してくださったか」
女王は特別B監房に収監されているベル・チャンダルに迫ったのだった。
B監房は一種の拷問用独房だった。床も天井も壁面もすべて鏡面仕上げのその部屋で、服を着ることは許されなかった。下着や靴はおろか、髪留めや義手義足の類まで一切の装具を取り上げられ、素裸で1日に数時間は立ち通しか正座で過ごし、看守や他の収監者からは丸見えだった。就寝時のみ毛布が与えられたが、明かりが消えることはなかった。
収監されて1週間後、押し黙ったままのベルの前にマリラが現れた。
「ベル・チャンダル、ほとんど食事を取ってないようだな」
ベルは黒髪を体に巻きつけるようにして立ち尽くしていた。やつれた頬に血の気はなかった。視線を落としたまま、両手を体の前で重ねていた。捕縛されて以来ずっと無表情だったが、女王を前にして初めて葛藤の色が宿っていた。
マリラは言った。
「そなたが私に真心をもって仕えていたことを私は知っている。女官としてのそなたはまことに真摯であった」
ベルの瞳が揺らいだ。マリラは看守が許す限りベルに近づいた。
「ベル、私を見なさい。私の眼を」
ベルの緑色の目が女王の言葉を待っていた。マリラは一語一語を噛みしめるように口にした。
「今日中に心を決めなさい。何も話さぬなら、そなたの命は明朝に終わる。
玄街間諜の任務を告白すれば、私はそなたにガーランド・ヴィザーツの新しい任務を与えよう。ベルや、すべてを話すのだ。そなたがかつて私の閨を温めてくれたことを忘れてはおらぬよ」
女王は今一度ベルを見つめたのち、背をまっすぐにして監房区をあとにした。彼女が去ったのちも、その視線がベルを射抜いていた。
「マリラさまは、私の心をご存知でいらっしゃる…」
9年前、女官候補生としてガーランドに潜入して以来、彼女はマリラの身辺を玄街の中枢へ書き送ってきた。
その一方で、彼女はマリラその人の魅力に取りつかれていた。寛大で残酷で公平でわがままな女王だったが、なによりアナザーアメリカを調停の秩序で守ってきたマリラの情熱がベルを打った。
ベルは格子の間から震える手を伸ばして、告白用の紙に綴った。
『私、ベル・チャンダルは5歳で玄街ヴィザーツに売られました。両親はアナザーアメリカン、売られた場所はミセンキッタ領国北部に近い緩衝地帯、同じ年頃の少女達と共に玄街ヴィザーツとして育ちました。8歳の時、玄街の首領グウィネス・ロゥの手で選抜され、ガーランドに潜入する間諜の使命を与えられました。ガーランド女官候補生になるためのあらゆる教育がなされ、私はグウィネスの期待に応えました。しかし、マリラさまに心を奪われた以上、私は玄街の裏切り者となりましょう…』
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