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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第7章「玄街カイエンヌ」

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第7章「玄街カイエンヌ」10 汎ミルタ空輸の格納庫


ベアンのトペンプーラは、急がば回れの精神で動いていた。
毎日、ジンガ・フロイスの名でベアンの街を歩いた。六の月が終わり、七の月が始まった。多少の雨が降ることもあったが、たいがい乾いた暑さが押し寄せた。クロードが午後から店の当番を務める日、トペンプーラは時々ドミと出掛けた。
その日はベアン市レダル区郊外の飛行場を目指した。そこではクントナ航空輸送と汎ミルタ空輸の2社が営業しているほか、各自で飛行機操縦教室を開校していた。レダル区とチタニー区を分ける川に沿った広大な用地には滑走路が二つあり、真新しい航空会社の営業所の向かいには管制塔と大きな格納庫が五つ並んでいた。
「地方都市にしては、大きな飛行場だな。芝生が美しい…」
トペンプーラは、帽子をかぶり直した。彼は初めて空輸されたドミ商店への荷物の受け取りに付いてきた。汎ミルタ空輸の到着荷物カウンターでは、ドミが受領のサインをしている最中だった。
「よしよし。遠いミセンキッタからよく旅をしてきたな」
荷物をポンと叩いて、トラックへ運ぶ手続きをした。トペンプーラは訊いた。
「中身は小麦だったな」
「冬小麦さ。去年、この辺は雨が多くて病気が多発したんだ。それで南部ミセンキッタから雨に強い品種を仕入れてくれと頼まれてな、航空便を使うことにしたのさ」
「鉄道はダメなのか」
「時々いいかげんな運送屋が無天蓋車に積み込むんだよ。どうなると思う。濡れて芽が出たら一巻の終わりだ。保険をかけたいくらいさ」
「かければいいじゃないか。安いものだ」
「仕入れが100キロを超える時はな。さて、頼んでおいた格納庫見学だ」
2人は乗ってきたトラックで、汎ミルタ空輸の港内貨物車のうしろを走った。貨物車の助手席の案内人はドミの知り合いで、窓から腕を伸ばして駐車場の一番左に停まるよう合図してきた。
「ついてきてくれ。小型の郵便輸送機から見よう」
ドミとトペンプーラは男と共に格納庫に入った。入ってすぐのところに、黄色い機体が整備を終えて光っていた。男は説明を始めた。
「機種名、ベザロクR4。当社開発の単発機で、現在ベアン市と領国府ミルス市間の郵便専用便として隔日ごとに運行中だ。
巡航速度は350時速km、航続距離は750km。なかなかのものだ」
ドミが言った。
「全翼型か。いい機体じゃないか。航続距離はもっと有るように見えるぞ」
男はべザロクR4の胴体と一体化している翼を触った。
「エンジンの部品がもっと手に入れば、双発にして距離を伸ばせるんだが」
トペンプーラはごく自然に言った。
「エンジンのどこの部品なんだい」
男はメンテナンス用の説明板の方へついて来いと手招きした。
「この中のエンジンは、畏れ多くもヴィザーツさまの飛行艇とほぼ同じメイバー駆動型だよ。けど、同じ名前を使うとマズイだろ。
ネス20型と呼ぶんだ」
トペンプーラは口の中で小さく繰り返した。
「ネス20型…」
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