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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第7章「玄街カイエンヌ」

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第7章「玄街カイエンヌ」8 噂の作法なんて…

ガーランドはまだ北辺の空にいて、悠長な速度でロシェック大山嶺へと進んでいた。
カレナードは艦長に1000ドルガの件で面会を申し込んだ。艦長室でエーリフは手形にしておいた1000ドルガを渡した。
「なかなか取りに来なかったのは訓練のためかな。君は航空部候補生を目指して飛行艇の完熟訓練に入ると聞いたが」
「キリアン・レーとホーン・ブロイスガーも一緒です」
「ぜひトール・スピリッツを自在に操れるようになり給え」
カレナードは艦長にも御礼がしたいと申し出た。エーリフは言った。
「レッスン代は君の友人からたっぷりいただいた。おかげで夏至祭では多くの乗組員が私の酒蔵で楽しめたのだ。酒は天下の回りものだよ。それより、噂の真相はどうなのかな。それを聞かせて欲しい」
カレナードは艦長までもがまだ夏至祭の噂に興味を寄せていることにうんざりした。
「レブラント君。ここは軍人の船だ。乗組員は厳しい規律で動いている。ゆえに噂話はうるおいなのだよ。扱い方にもちゃんとルールがあるのだから、安心して話題の人になっているといい。そのうち君にも分かるだろう、それとも何かね、本当にマリラさまと深い仲になったのかな」
「違います。誤解です」
「ふむ、恋愛沙汰というのは誤解で満ちているものだ」
カレナードはなぜ話が妙な方向へ行くのか分からなかった。
「恋愛沙汰って…誰が…」
「君と女王だ」
「嘘でしょう、なぜマリラさまと僕が、そんな関係なのですか」
エーリフは紋章人にまったく自覚がないのにあきれていた。
「なぜもへったくれもないぞ。君は女王を慕っているのだろう」
カレナードは疲れを感じながら返した。
「尊敬しています。でも、僕は紋章人であって、愛人ではありません」
「へそまがりめ!いいか、ガーランドでは噂話の主をからかうのは1分で切り上げるのがルールだ。それも10日間限りと決まっている。今のうちに皆を楽しませてやれ」
「夏至祭以上のことは無理です」
エーリフの眼は笑っていなかった。
「では、噂ではなく本当のところを聞かせてもらおうか。半時間後に大山嶺方面会議があるので簡潔に頼む」
「僕をからかうのは1分間だけです」
「もとろんそのつもりだ」
彼は会議5分前まで紋章人を質問攻めにした。
カレナードは1000ドルガの半分を男子訓練生に分けた。
レッスンに付き合った連中も彼の当番を引き受けた連中も応援だけした連中も、喜んで受け取った。訓練生管理部の経理セクションに頼んで、残りを手形にする手続きを取った。キリアンは服の一つも新調しろと勧めたが、カレナードは手形をシェナンディ家に贈るつもりだった。シェナンディ氏とフロリヤに、感謝を形として伝えたかったのだ。カレナードはシェナンディ家への手紙を書いた。
「フロリヤさん、オルシニバレを出てから、初めて我が身で得たものです。どうか父君に納めてください」
トペンプーラにもお礼を用意して訪ねた。彼は不在だった。
「残念だな…。会ったら情報部副長も艦長のように僕をからかうかな。いや、あの人はしないだろう、そんな気がする」
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