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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第7章「玄街カイエンヌ」

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第7章「玄街カイエンヌ」7 生まれの違いを越えて

ティゲル・ピグスの現住所はベアン市バイエン区外・北街道通り23番地で、そこはヴィザーツ専用飛行場のすぐ隣だった。
3年前に免許を取っていて、大型車免許が含まれていた。さらに見てトペンプーラは「ほう…」と唸りそうになった。ティゲルが7ヶ月前に軽飛行機操縦免許を取得していることが追記されていた。
「何のために彼は操縦を習ったのか」
軽飛行機操縦免許はバイエン区の交通局で交付されていたが、付記を注意して読むと免許の承認はミルタ連合領国府の航空交通省が行っていた。
「ベアン市には領国府の出先機関があるはず。詳しいことはそこからデス」
コツンコツンと足音がして、窓口の女が戻ってきた。彼女が脇に抱えた事故統計ファイルを開く間に、トペンプーラは手元のファイルを第288号のページに戻した。
女は黙って持ってきたファイルを彼の前に置いた。
「手間をかけたね、ありがとう」
礼を言うと、女はどうでもいいように軽くうなずいた。
10分後、彼は交通局を出た。長い官庁街を通り過ぎた。その先にあるのはベアンのヴィザーツ屋敷だった。アナザーアメリカンだった3歳の彼が、ヴィザーツのヨース夫妻の養子になった場所だった。彼はそこまで行かずに大通りの並木の下のベンチに落ち着いた。そろそろ夕刻だったが、まだ十分に明るさがあった。
「よう、ジンガ・トロイス」
彼に声をかけたのは車の運転席に座ったドミ・ヘットだった。
「乗って行けよ。ちょうど帰り道さ」
ドのトラックに乗ってから、トペンプーラは指で暗号を示した。
「こちらの守備は上々だ」
ドミ店主は言った。
「ヴィザーツ屋敷と付き合って20年。厨と西御用門付近の連中とはすっかり顔なじみ。内情もたいがい筒抜けで耳に入るくらいだよ。儂の口の堅いのは、連中、よく知っているんでな。もっとも、彼らはアナザーアメリカンが何を言おうと屁でもないと思っているが」
「ヴィザーツ特有の傲慢さか」
「ハハッ!可愛いものさ。警戒心が限りなく薄くなってるな」
トペンプーラは眉根を寄せた。
「だから玄街に付け入られる」
「そこだよ、ジンガ。ちょうどこの辺も夏至祭に玄街が出た話もある。それを聞きに行こう、うちの近くのバーがいい。そうだ、ヴィザーツ屋敷の門だけ拝んでいこうじゃないか」
ドミのトラックはロータリーを回り、ヴィザーツ屋敷の正面大門、東運河門、東通り門、北御用地門西御用門、西街道門を見て一周したのち、ベアン市の北辺環状道路を帰路についた。雲が厚くなっていた。
「ドミ、クロード嬢には何も知らせてないだろうな」
「娘を巻き込む親がどこにいる」
「それなら、いいんだ。下手すると命に係わる」
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