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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第1章「禁忌破り」

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第1章「禁忌破り」21 調停完了祭 (挿絵追加 2014/6/13)

最初に調停の結果が正式に披露された。
ネルー氏族の水利権は認めず、かわりにオルシニバレ市が家畜の糞尿処理をネルーの人々と共同で行い、湖の水質を守ることとなった。さらに将来は一定量の畜産物をオルシニバレ市場に買い入れることで決着した。それはガーランド女王が臨席する市内の大公会堂で発表された。
あとは日毎に祭りが開催され、10日の間、湖から市内までのあちらこちらで調停の日々を皆がねぎらいあった。
最後の大討論会をパロディ化した芝居にオルシニバレ市民もネルー氏族も爆笑した。パレード、野外舞踏会、大罵倒大会に拳闘試合と、行事が続く。新しい行事として、調停期間の記録映画の上映会が加わり、劇場は常に立ち見が出ていた。
最終日は調停準備会の代表がガーランドに特別に招待され、浮き船の中の大宮殿で女王に拝謁の栄誉を賜って、一連の幕を閉じる。
シェナンディとフロリヤはその一員となった。特にフロリヤは女王に踊りを奉納する舞踊団に加わっていた。
挿絵(By みてみん)
半年間の特訓のため、例のボランティアをこなす回数が減るほどだった。
その隙にマヤルカはカレナードに祭り見物に付き合う約束をさせていた。
彼女は15歳になり、女学校がつまらないという理由で、さっさとオルシニバレ大学校付属の医学高等学校へ編入した。そこでは射撃クラブに入部した。くりくり動く瞳と両耳の上できゅっと結んでなびかせた赤毛はそのままマヤルカの心のようだった。
カレナードが奨学生試験の勉強中も彼女は放っておかなかった。
「たまには息抜きしなさい!あたしと一緒に来るのよ!」
休日に連れて行かれる場所はいつも学校以外の射撃場だった。
「なぜ学校の射撃場で練習しないのですか。」
「クラブの面々は下手くそなのよ。おもしろくないわ。」
マヤルカは淑女のドレスは着たいけど、淑女になるつもりは無いのだ。
「あなたはお姉さまのドレスを着てきゅうくつじゃないの。」
「淑女の世界はけっこうスリリングですよ。お嬢さん向きではないですけど。」
「そうでしょ!私は扇の影で密談したり、無意味な恋愛ゲームに興じたりしない。あなたもあの世界に深入りしないでよね。」
「銃を構えてるお嬢さんは淑女というより闘士です。」
マヤルカは他に言いようがないのかしらと睨んでから標的に銃身を向けた。二発続けて命中した。
「ドレスは着るわ、結婚式でね!」
生涯独身でいるつもりはないようだ。カレナードはなんとなくホッとした。そしてマヤルカのエネルギーが今以上激しいベクトルを持たないよう願うのだった。
完了祭の始めに大公会堂で女王を見ようとしたカレナードだったが、シェナンディ家のつてを使っても入場券は手に入らなかった。せめて公会堂前の大通りから女王の姿を見ようと前夜から製図室の仲間と場所取りに行ったが、凄まじい警官の群れとガーランド派遣のヴィザーツ警備隊に追い返された。帰る途中で玄街ヴィザーツを見かけ、皆で逃げ戻った。
当日は女王を乗せた飛行艇が大通りを滑走するさい、キャノピーの中の横顔を、大観衆とともに遠くから一瞬認めただけだった。
それで満足すべきだったのだが、試験が終わり町中が祭りで年越しも近いとなれば、高揚感は簡単に収まらず、彼はもう一度女王を間近で見たい欲望に捕らわれていた。マヤルカに付き合う間も彼の心はガーランド女王を追っていた。
機会は突然訪れた。奉納舞踊団の助手が2人怪我をして、欠員が出来た。フロリヤの介添え役として入場の先導をする役目だ。1人は花籠を持ち、もう1人は市の紋章入りの笏を捧げて行進するだけだった。マヤルカとカレナードは喜んでこれを引き受けた。
「リハーサルは2回もあれば、十分よ。カレナードも私も、ダンス教師に習った腕前だし、市の例祭で毎回踊ってきたんだもの。」
マヤルカは張り切った。
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