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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第7章「玄街カイエンヌ」

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第7章「玄街カイエンヌ」6 変名ジンガ・トロイス

路面電車は三つの川を渡った。
ベアンのヴィザーツ屋敷は官庁街のあるバイエン区の最北端にあり、5000人のヴィザーツの基地だった。区外に隣接してヴィザーツ専用の飛行場と農牧用地が広がっていて、その面積はバイエン区の5倍はあった。ヘット商店はその農牧用地に撒く種物と屋敷の台所で使う香辛料を請け負っていた。
トペンプーラはバイエン区の中央付近で路面電車を降りた。そこからゆっくり歩いて石造りのアパルトマンと広場が続く通りを北上した。まもなくバイエン区助産所と交通局が現れた。
「まずは実務的な仕事に参りマス」
トペンプーラはバイエン公会堂付属の郵便電信局に入った。
「ここに一ヶ月ほど私書箱を設けたいんだ。ああ、西メイスの本社との業務連絡の窓口にしたくてね。私の身分証明書はここに」
彼が示した身分証には「西メイス領国府発行・正歴2477年1の月11日生まれ、ジンガ・トロイス」とあった。トペンプーラの変名の一つだった。
彼は私書箱開設申請書が受理されるまでの2時間に、局員に8回の説明を求められた。トペンプーラは慌てなかった。無事に契約書にサインし、使用料を支払った。
「どこでもこんなものです。上手くいった」
次にバイエン交通局に入った。交通局を入ってすぐの大きなサロンには掲示板があった。運転免許を取った者が運輸業を始めたり、運輸業者が運転手を募集したりする際に、広告を張り付けているのだ。それには必ず免許番号が記されていた。したがって番号のない広告は信用されないし、嘘の番号を載せると交通局内ということもあり、すぐにばれるのだった。
トペンプーラは第295号の免許番号のある広告を探したが、予想通りなかった。そこで、第288号の広告に目を止めた。交通局の掲示許可番号は57番だ。彼は照会カウンターへ行き、掲示許可57番の運転手の情報を求めた。
窓口の女性は分厚く綴じたファイルを出してきた。ファイルの背表紙に「第251~第300号」と記されていた。彼女はふっくらした指で第288号の書類を開いた。事務的な声で「どうぞ」とだけ言った。
トペンプーラは全く関係ない男の顔写真を眺め、文字を追った。それから彼女に言った。
「この288号の人、免許を取って3年だが、事故歴はないでしょうな。そこが大事なので確かめたい」
女は「この先、事故にあうかもしれないのに」と、さも無駄なことのようにつぶやいたが、トペンプーラは食い下がった。女は仕方ないという風に奥の巨大な資料棚へ向かった。トペンプーラは素早く第295号のファイルをめくった。
ポーの町で気絶させた男の顔写真があった。バジラ・ムアより張った頬骨と陰気な目。上唇が妙に薄く、右端にわずかに傷痕があった。
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