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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第7章「玄街カイエンヌ」

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第7章「玄街カイエンヌ」1 単独行の朝

第7章に入ります
情報部副長トペンプーラはガーランドを離れ、地上での諜報活動に赴いていた。
岩だらけの荒れ地に曙の光が上がる頃、グライダーを折りたたむ作業に入った。全長4mの翼は甲板材料部の傑作だけに、コンパクトな構造だった。ジェット噴射装置を含む翼が基幹部にきれいに収まって、保護カバーで包むと四角い岩にしか見えなかった。
「お見事。さすがマギアチーム」
装甲スーツから取り出した遠距離通信器が手の中にあった。彼は中身をくり抜いた本に、それを仕舞った。
装甲スーツは硬化固定コードを解除され、柔らかくなって小さな塊にまとめられた。それをヘルメットの中に仕舞い込み、グライダーの保護カバーに押し込んだ。
「このスーツ1着作るのに、何十回のコードを使ったのでしょう。それを一発で硬化解除できる仕上げにしましたか。帰ったら褒めて差し上げましょう」
1時間の作業でトペンプーラはガーランド精鋭の装甲スーツ姿から、ミルタ連合の巡礼地を回る修行僧の姿になった。生成り色の布頭巾を被り、モスグリーンのチュニックとズボン、白く長い外套、胸にお捻り袋を下げ、背中に修業行李を背負い、カンバス地の布と皮で出来たサンダルを履いた。
朝日が昇った。
彼は荒れ地を抜けながら、所々に目印のアンカーを打った。それは起動コードに反応して狼煙を上げる仕組みになっていた。2時間後には眼下に林と川筋が広がっていた。
「うちの部長と参謀室長にも見せたい眺めデス。あれはベアン川の支流でしょうネ」
川沿いを下って1時間近く行くと、馬車と自動車の轍が草原に道を付けていた。
トペンプーラは道標を見た。彼の最初の目的地、ポーの町まで10kmだった。
彼は木陰で固焼きパンと干しリンゴを食べた。川沿いの道には風があったが、空から雲が消えて、太陽がじりじりと地面を焼いた。遠くからニワトリの鳴き声がした。
「民家がありますか…。朝の托鉢が上手くいくといいデス」
修行僧は立ち上がって、ニワトリの声のする方へ向かった。こじんまりと丸太を組んだ家があった。人の家より家畜小屋の方が大きかった。開け放された扉から羊と牛が放牧場に出ていて、毛足の長い番犬が闖入者に気付いて吠えた。すぐに家人が家畜小屋の奥から顔を出した。
「おおい、ヒックスか!出荷は明後日や!荷作り手伝いに来たんかぁ。けどな、酒はないのや。おい!返事しろや!」
怒鳴っていたが、相手が坊主と分かると、急に大人しくなり、ぺこりと頭を下げた。
「お坊さん。おはようごぜえやす」
「仕事の邪魔をして申し訳ない。水をもらえませんか」
「家の方に嬶がいるんで、声をかけてやってくだせ」
「ありがとうございます。今日いちじつの平安がありますように」
「ありがとごぜえやす。ついでに嬶とべこ共の分も頼みます」
「分かりました。こちらの奥さんと生き物達にも今日いちじつの平安あらんことを」
信心深い男は手を合わせ、さっと仕事に戻った。
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