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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第6章「夏至祭」

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第6章「夏至祭」46 飛翔を夢見る

「ねえ、カレナード。あなた、マリラさまを慕っているんでしょう。だって、忘れられてつらかったんだから」
マヤルカの問いにありのままを告げた。
「ずっと秘密だったことを話すよ。僕は父が死んだとき、女王に助けられたんだ。僕は父を生き返らせようと願い、禁忌を犯すところだった。それを諌めてオルシニバレ市に向かわせたのがマリラ女王だった。尊敬はしているよ。でも、私人のマリラさまはなんだか怖ろしい…」
「あなたったら、そんなことを黙っていたのね」
「マリラさまとの約束だったんだ。誰にも言わないって」
「なら仕方ないけど…私人のマリラさまは恐ろしい方なの」
「謎のような方だ。正体がわからない、本当に…」
「マリラさまはあなたを助けたことも忘れているのね」
カレナードは「ああ」と小さくうなずいた。
マヤルカはやはりカレナードの心に女王が棲み付いているのを感じた。
「寂しいわね。でも、負けちゃだめよ。私のカレナード」
いよいよ荒れて波立つ湖を前に、カレナードはホーンの言葉を思い出していた。
「夏至祭まで僕の目標は踊り比べだった。それが終わった今、彼が言うように、新しい目標を持った方がいい。少しでもガーランドに貢献できる人間にならなければ、やがて僕の立場はなくなるんだ。
それはマリラさまの顔を潰すことにもなる。役立たずの紋章人ではいられないんだ」
2人は土砂降りになる前に撤収ゴンドラに乗った。ハッチで乗船チェックを受けていると、ハッチに赤い点滅ランプが灯った。警備隊が最後の見回りに出る合図だった。エンジンの音が出航に向けて唸り始め、2人は急いで新参訓練生棟を目指して走った。
夜半に浮き船は台地を離れ、上昇を始めた。まだ雨が降っていた。第一艦橋では出航の鐘が鳴らされ、ガーランド中に響いた。
窓の外を見ると、下層天蓋の上では雨水がほのかな光を受けて幻のように流れていた。祭りは終わり、明日からの厳しい日々を思った。
後ろからヤルヴィが腕を回して、もたれてきた。彼は10歳の誕生日以降、ぐっと大人びていた。
「楽しかったね、カレナード」
彼の指の何本かは弾き豆が潰れて、硬くなっていた。
「フィドルの弦が切れなくて良かったな、ヤルヴィ。軍楽団のベテラン達が褒めていたじゃないか。」
彼はヤルヴィの硬くなった指に触った。ヤルヴィは誇らしげだった。
「僕、この歳のせいで兵站部配属になったと思うんだ。でも、次はコード開発部を志願するんだ」
「ハーリと一緒かい」
「そうなると思う」
「僕はトール・スピリッツパイロットを目指すよ」
シャルが飛んできた。
「そりゃすごい!兄貴のニコルは3年生のくせにやっと飛行艇の完熟飛行の真っ最中だ。トップを取ってやれ、カレナード」
キリアンは黙って窓枠にもたれ、腕を組んでいた。
「カレナードと俺は強烈にライバルってわけだな。おもしろい!」
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