挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第6章「夏至祭」

230/388

第6章「夏至祭」44 祭りのあと

同じ頃、ウマルはリリィを飛行艇に乗せて、大山嶺北端の鄙びた温泉にいた。
「地上の温泉なんて、雑菌だらけじゃないの!」
激しく反発するリリィに、ウマルは「無知だね」と言った。
「温泉にもいろいろあるんだよ、リリィ。私が君に勧める温泉は、雑菌を落として自然治癒力を上げるんだ。自然の恵みを受けようじゃないか」
「わ、私に温泉に入る体力が戻っているとでもいうの」
「夏至祭で大口を開けて笑ったろう。あれが良かったのかもしれないな。笑う門には福が来ると言ってな」
「そうなの。私にはよく分からないけど、主治医のあなたに任せるわ」
リリィは服を脱ごうとして、ためらった。
「ウマル、向こうを向いていてよ」
「おやおや、君の体をあれほど診察したのにか」
「ここは施療棟の病室じゃないわ」
「意外だなぁ、リリィ・ティンにもデリカシーがあったとは」
「イヤな男ねッ!」
リリィはそっぽを向いた拍子に濡れた岩肌に足を滑らせた。咄嗟に彼の腕を頼った。小さな叫び声と大きなしぶきが上がった。
「げほっ……!リリィ、大胆だな。服を着たまま湯につかるとは」
「あ、あなたのせいよっ!ずぶ濡れだわ!」
だが、ウマルを見た女医は吹きだした。
「あはははは。あなたもひどい格好ね。鏡があったら見せたいくらい」
「参ったな。清拭コードで服は乾かないよ、リリィ。飛行艇から何か取って来よう。湯に入っていなさい」
「だめよ、ウマル。1人にしないで」
リリィはウマルの上着を掴んだ。
「獣が来たらどうするの。私は銃を持っていないのよ」
「ヴィザーツも人間だ。こんな時は無力だな。よし、服を脱いで一緒に温まるか」
「好きにしたら」
2人は背を向けて脱いだ服を絞り始めた。
翌日、ガーランドの夏至休暇は最後の日を迎え、大急ぎで残りのテントを船倉に仕舞い込んだ。
カレナードは船倉でベテランヴィザーツ達から際どい噂を問いただされた。
「いつまでも女王さまの褥から出られなくて、女官長に叱られたって本当かい」
カレナードは明るく返すしかなかった。
「誰がそんなことを言っているんですか」
「誰だっていいさ、ちょっとだけ聞かせてくれよ」
「女王さまの褥に入れるわけないでしょう」
「でも、テントには入ったんだろ」
「それはそうです」
「一糸まとわぬ美人がいただろ」
「誰も裸になっていませんよ。ああ、次の荷物を取りに行かなきゃ。失礼します」
「おい、服を着たままだったのかよ」
ベテランヴィザーツはカレナードの背中に問いかけたが、それはすぐに笑い声に変わった。
一緒に行ったR班のホーン・ブロイスガーは苦笑していた。
「おい、今頃になって赤くなってるのか」
カレナードは大股で歩いていた。
「恥ずかしいじゃないか」
「気にするな。今夜、出航したら噂はすぐ消えるさ。明日はさっそく訓練再開だし、俺は管制部でそちらの訓練をサポートだ。大山嶺にそって南下するコースは気流が荒いっていうぜ」
「らしいな。管制業務、よろしく」
「お前、飛行艇よりトール・スピリッツの候補生になれよ。それなら一目置かれるぞ」
「トールの加速度は飛行艇の3倍だぞ」
ホーンはカレナードの前に回り込んだ。
「へへっ!やる気になった顔だ!そうこなくっちゃ。」
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ