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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第6章「夏至祭」

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第6章「夏至祭」43 夜光雲

マリラは静かに行動を開始した。後夜祭が終わるころ、女官長とベル・チャンダルを伴ってガーランドの警備隊本部を訪れていた。
「ヤッカ、例の件を確認しに来た」
ヤッカはうなずいた。
「こちらへどうぞ。女王陛下。女官長殿も」
ベルを残して2人は防弾ガラスで覆われた小部屋に入った。ヤッカは小型遠距離通信の受信機を差し出した。そこに黄色のランプが点灯しているのをマリラは確認した。
「では、隊長。手筈どおりに」
女王の言葉を受けて、ヤッカは警備隊員に合図した。ベルの両側にいた警備隊員が彼女の腕を後ろに回し、手錠をかけた。
「女官ベル・チャンダル、貴官を間諜容疑で逮捕する」
ベルは叫んだ。
「ヤッカ殿、何をお間違いになるのです。マリラさま!マリラさま!」
女王は小部屋から出て、ベルの前に来た。
「ベル、そなたはトペンプーラと私が仕掛けた罠を…見抜けなかった。そなたの居る前でわざと彼は自分の単独行を漏らしたのだ。その情報を巧みに手紙に隠したようだが……迂闊だったな」
ベルの表情から感情が消えて、恐ろしいほど青い顔になった。ヤッカが命じた。
「特別B監房に連れていけ」
人影が消えてから、マリラはやっと口を開いた。
「トペンプーラはベアンで玄街の待ち伏せにあい、我々に合図を送ってきた…、ベルがガーランドに残る最後のスパイだと。彼が危惧していたとおりだった。ジーナ、黙っていて悪かった」
「敵を欺くには、まず味方からですわ。でも、気持ちの良いものではございません。あら、申し訳ありません、つい弱音を」
「女官達には他言無用だ。頼んだぞ、ジーナ」
「ベルは女王の用命にて長期出張ということにいたしますわ」
2人は闇にまぎれてテントに戻った。マリラは夜更けの風を受けた。遠い空に雲が光っていた。
翌日は総員で撤収作業が行われた。空は雲が多くなり、南東の風が吹いた。夏至祭の痕跡が一切残らないほど、何もかもが取り払われた。午後には女王の壮麗なテントも、大きな舞台も、種々のテント群も、きれいに片付いて行った。
残ったのは、兵站部と甲板材料部と訓練生の宿泊テントだけだった。夕暮れ前の一時、新参達の多くが湖へ羽を伸ばしに行った。
シャルとヤルヴィは泳いだ。南国育ちのシャルは悲鳴を上げた。
「うひーーっ!冷てええーっ!」
北メイス出身のヤルヴィは全然平気だった。
「河童の軟弱芸術家!」
「うるせぇやいっ!」
アレクは北西のサージ・ウォールの方角を見ていた。
「明日は雨になるな。早めにテントを片付けようぜ、班長」
ミシコは相槌を打ちながら、しばし北の辺境の景色を眺めていた。
「ヴィザーツの聖地か…。何もない所なのにな。なんで懐かしい感じがするんだろう」
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