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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第6章「夏至祭」

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第6章「夏至祭」41 舞台下・劇中ワルツ

昼食前にはナサールが新参達に身支度をさせていた。
「それじゃー、本日のお仕事と行こうじゃないか!昨日の働きぶりは最高だったと艦長殿がお褒めになってたぜ!」
キリアンは第5レッドテントに入ってハッとした。マヤルカがいた。カレナードが棒のように突っ立っている。
先に来ていたアレクが肩をすくめた。
「本日の弁当作りは女子Y班とZ班と合同になったんだ。今、分担を割りふり直しているところさ」
ミンシャがキリアンとカレナードに手を振った。
キリアンはマヤルカとカレナードの間にもつれた糸のような感情のやりとりを盗み見て、第5レッドテントが修羅場にならないよう立ち回ろうと決めた。
後夜祭は夏至祭の無礼講とは違い、乗組員はのんびりと宵のピクニックを楽しんでいた。
夕方から舞台に軍楽団が出て、ヴィザーツ有志で結成した合唱団と軽い歌曲を演奏した。この日の主役は甲板材料部と総合施設部と航空部で編成した素人劇団で、彼らは『テネ城市の陽気な女房たち』を演じる予定だった。
新参達はこの日も裏方で頑張った。第5レッドテントでは、追加の仕事が舞い込んできた。ミリアンが伝票を読み上げた。
「誰か手が空いたら、舞台脇のボックスへ弁当を40個届けてくれ。」
カレナードは揚げじゃがいもと鮭の燻製弁当を詰め終わったところだった。
マヤルカは潮キャベツと乾燥トマトのサラダを作り終えたところだった。
2人は同時に「手が空いた」と言って、互いに「しまった!」とあわてたが、遅かった。キリアンはさっさと40個の包みを渡した。ミンシャはマヤルカに目配せした。
「行っておいで。仲直りするンだよ!」
2人は弁当を背負った。充電パネルを使った道標に沿って、押し黙ったまま、舞台に続く小道を行った。
ボックスでは素人劇団のスタッフがたむろしていた。
「弁当、待っていたぞ。おや、昨日の無礼者が今日は配達人かい」
カレナードは手早く弁当を渡していった。
「どうぞ。新参特製の美味しい弁当です」
マヤルカは仏頂面こそしていなかったが、笑顔はなかった。劇団の上演が始まり、2人は出演者達の邪魔にならないよう舞台の下の空間を通り抜けて帰るよう指示された。そこは広大な楽屋になっていた。劇中のワルツが頭上から聞こえてきた。カレナードはマヤルカを振り返り、手を差し出した。
「僕は約束を果たす。踊ろう、マヤルカ・シェナンディ」
マヤルカの眼の色はまだ怒りに燻ぶっていたが、カレナードのリードに乗った。劇中歌はすぐに終わったが、止めるなと合図したのはマヤルカの方だった。
2人はエプロン姿のまま、楽屋の片隅で沈黙のダンスを続けた。
踊り終えて、カレナードは言った。
「許してくれるかい」
マヤルカの目がじっと紋章人を見ていたが、やがて床に落ちた。
「許したいけれど、許せないわ」
許したいのは彼女の感情だった。許せないのは彼女のプライドだった。
せめぎ合いの中で、彼女の頬がぴくりと動いた。
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