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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第6章「夏至祭」

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第6章「夏至祭」40 湖の若者の先に

キリアンの機転でカレナードは昼前の数時間眠った。
新参男子の半数は聖地である湖で泳いでいた。そこから遠くないところを、ヨデラハンとマイヨールが散歩していた。湖への小道をたどりながら、歴史教師はヨデラハンの問いに答えていた。
「時代の変化が何に現れるか、それは最初、ほんの小さな処で起こるの。だから、アナザーアメリカの大地に直接暮さない私達は、すぐには気づかないわ」
ヨデラハンはそれを危惧するからこそ、ポルトバスクからトルチフまで降りてみたと言った。
「マダム・マイヨール、私の目にはどうということのない緩衝地帯でした」
「緩衝地帯のヴィザーツ屋敷はいかがでしたか」
「5ヶ所ほど寄ってみましたが、特に引っ掛かることもなく…外れのヴィザーツはアナザーアメリカンと見分けがつかない」
「ヨデラハン、それがいいのよ。アナザーアメリカンと同じ暮らしをしてこそ、変化に敏感でいわれるわ。彼らのカバーには最大の感謝を贈りたいわ。ヴィザーツ屋敷の開放には難点もあるけど、閉鎖ばかりが防御ではないでしょう。」
ヨデラハンはうなずいた。
「確かに、今までのやり方ではこちらが後手に回ります。それは避けたい」
マイヨールの顔を戦士の表情が横切った。
「それで話の続きだけど、小さくても革新的で人々が求める変化なら、すぐに広まる。今のアナザーアメリカでは飛行機と自動車だわ。飛行艇のメイバー駆動システムを、アナザーアメリカンが応用しているのよ」
「大した技術力です。20年前には考えられなかった」
「その技術を支えているのは何かしら。きっと玄街も新しい技術を持っているに違いない。私達はいきなり同等か、それ以上の武装を持った敵と戦う可能性があるわ」
ヨデラハンは言った。
「そうでしょうか」
「それよ、ヨデラハン。ガーランドとヴィザーツ特有の奢りだわ。慢心が油断を生むのよ」
マイヨールは参謀室長を肘で小突いた。
「アナザーアメリカンは玄街の隠れ蓑ね。
50年近く前にはわずか50kmだった軌道列車の線路は、今や30000kmに伸びた。それに飛行機と自動車の運転手はこの5年で、激増したのよ。
人の移動はもっと激しくなり、人口の集中が起こり始めている。玄街にとっては、活動しやすい時代に入ったの」
「マダム・マイヨール、歴史教師の役職だけにしておくのは、もったいないですな」
マイヨールは彼を振り返った。
「これはね、女王仕込みなのよ。私が訓練生だった時に、マリラさまに学んだのよ」
「女王にですか」
「そう。今現在こそが歴史であることを。それを受け継ぐ訓練生を望んでいるの」
「そのことですが、十ヶ月訓練生の中からガーランドに残す者を選考する予定です」
「若者を予備役に…」
「それもありますが、人材を育てておかねば。次代のために。」
ヨデラハンは湖ではしゃいでいる訓練生達を顎で示した。マイヨールは厳しい顔を向けた。
「教え子が先に逝くとなれば私達の心は鬼…。歳は取りたくないわ、ヨデラハン」
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