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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第6章「夏至祭」

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第6章「夏至祭」38 寂しさを埋めるもの

女王の端麗な顔に疲れが貼りついていた。それを蝋燭の火が照らしていた。
マリラの寝顔は孤独に満ちていた。
カレナードはふと後悔に似た感情に襲われた。
女王の特殊な境遇ゆえに、彼女は夏至祭にかこつけて踊り比べに出場もし、彼と戯れようともしたのだと、思い至った。
マリラの誘いに応じても良かったのだ。
自分のちっぽけなこだわりなど捨てて、そう、トペンプーラが言ったように、彼は自分を捨てて、女王と快楽を共にして何の不都合があったのだろう。
彼女と抱き合う方法を見つけたかもしれないというのに。それで彼女に隷属するとは限らなかったのに。
カレナードは自分の狭量さを今更嘆こうとはしなかった。
「シャルに言わせると、肝無し野郎だな。だから、せめて添い伏しをして差し上げようと決めたんだ。せめて僕に出来ることを…マリラさまに…」
彼は衣装の下の自分の胸の膨らみに触れてみた。それはリリィに嬲られ、マイヨールに見守られ、マリラに迫られた胸だ。
彼は再び複雑な心境に陥った。
「今日はこれでよかったと、思うことにします、マリラさま。いつの日か、あの時はあれで良かったと言うことがあるかもしれません。
僕は僕の役目に入ります」
蝋燭の火が消えようとしていた。火が消える瞬間に、静かにマリラの額に口づけした。彼は広いマントの下に滑り込んで、女王の手を自分の胸に乗せ、小さく詠唱を唱えた。女の胸はこのように使うと、初めて知った。
女官達はやっと緊張を解いた。
「警備隊の出番がなくて何よりでした。済まなかったわね、ピード殿」
「女官長殿、それは構いませんよ。せっかくですから、夜明けまでここにいさせてください」
ベル・チャンダルが「どうぞ」と言って、夜食を取り出した。
「アライアとイアカ候補生と私が当直しています。ご一緒にいて下さると助かりますわ。ドルジン殿は起こしましょうか」
「ああ、俺が起こしますよ。おい、ドルジン、美人がいっぱいだぞ」
その時、道化がムカデのおもちゃを籠いっぱいに女官テントに放り込みに来た。目敏く見つけたのはピードだった。
「ワイズ・フールめ、一泡吹かせてやろう」
アライアがさっと鞭を取り出した。
「夏至祭ですもの。こちらも道化と遊んで差し上げましょう」
その騒ぎをよそにマリラとカレナードは深い眠りの中にいた。
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