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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第6章「夏至祭」

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第6章「夏至祭」36 ついに墜ちるか

ジーナとアライアは突入の機会を逸していた。マリラの面子を潰さずに事を収めたかったが、それどころではなくなったのだ。
アライアが提案した。
「警備隊を!カレナードを狼藉者として逮捕させましょう」
ジーナはマリラの乱れた姿を男達に見せたくなかった。
ベルが来て、もう少し様子を見てからでも遅くはないと言った。
「女官長さま、カレナードはそれほどバカではありませんわ。彼には底力があります。第一、彼にマリラさまを傷つけることなど出来ませんもの」
カレナードはマリラを組み敷く形になっていた。転がったまま力比べの様相を呈していたが、やがてマリラは力を抜いた。
「私の負けだ。カレナード、そなたはやはり男だ…」
重なった体の下で、マリラの脚がそっと動いた。
カレナードの顔のすぐ下にマリラの顔があり、再び眼と唇が彼を誘った。カレナードは、目が離せないでいた。
マリラの瞳は「恐れることなど何もない」と語りかけた。
唇は魔力のように彼を惹きつけた。女の肌と汗の香りが立ち上り、暖かな体温が目眩のように彼を包んだ。
カレナードはまだ抗った。マリラの手首を握りしめたまま、5分が経とうとしていた。
マリラが急に辛そうな声を上げた。
「痛い、離しておくれ…」
カレナードは掴んでいた手首を離した。代わりにマリラの両手が彼の頬と耳に伸びた。幻のように踊り比べの光景が目の前を通り過ぎ、その瞬間、彼の自制は消えた。
抗うのをやめた唇はマリラに墜ちた。舞台の上での硬い接吻とは違い、熱い奔流が流れた。カレナードはマリラを抱きしめ、思うままに女王の唇を貪った。
彼は長い間、こうした触れあいに飢えていたことを知った。玄街のコードに侵された体ゆえに、彼が自ら諦めた行為だった。
マリラの肌はしっとりと柔らかく、肌の香りは本能を呼び覚ました。
女王は大きく吐息を漏らした。その指が彼のうなじを撫でた。部屋履きを脱ぎ捨てた足の指が彼の足首を這った。
女王は全身で彼を快楽の淵に引きずり込もうとし、彼もそれに応えようとしていた。
女王も紋章人も、ただの獣になるつもりだった。
カレナードはマリラの鎖骨へと唇を移した。だが、それが乳房に達しようとしたとき、彼の鳩尾に激痛が走った。
「駄目だ、これ以上は…。マリラさまも僕も駄目になる!」
彼は素早くマリラから離れた。腹の奥に疼く何かを片手で押さえた。
マリラは上体を起こして、少年を見た。彼はもう片腕で顔を覆っていた。やがて腕が下がり、互いを見た。どうしても男と女に成り切れず、2人は自分達の情けない状況を認めるしかなかった。しかし、マリラはそれを許さなかった。彼女はまだへこたれていなかった。2人は再び挑みかかった。睦言とは程遠い叫び声が起こり、今度は座卓の上のリュートが落ちた。
女官達は冷静でいるしかなかった。ベルは言った。
「カレナードの作戦です。マリラさまが疲れて諦めるまで持ちこたえるつもりです」
争う物音を聞きながら、30分が過ぎた。
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