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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第6章「夏至祭」

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第6章「夏至祭」35 夜戦は続く

そのままマリラの愛人になってしまえば、それは楽な道のように思えた。女王の庇護を受け、今よりは彼女の理不尽な行動に悩まずに済むかもしれない。
しかし、それを由としないカレナードがいた。何より、彼は知っていた。その関係によって今以上にマリラに従属し支配されかねない、得体の知れない弱さを自分の内に感じていた。
彼は仕方なく実力行使に出た。
「マリラさま、ご無礼!」
マリラの両腕を振りほどき、その体を突き飛ばした。彼女は後ろのクッションの中に尻餅をついたが、身軽に起き上った。
「これくらいで私が諦めると思うのか、夏至祭だぞ、カレナード」
「僕が尊敬し敬愛する女王は、このようななさりようをする方ではありません」
「ふふふ、それはかつてお前を助けた私の姿か。そなたは思い出の中の私を後生大事に守るつもりか。それで私の紋章人が務まるとでも思うのか。ポルトバスクで私の影を堂々と演じられたのは、私のもう一つの顔に気付いたからではなかったのか。女王の力は悪だと、トペンプーラが示唆したはずだ。
今、そなたの前にいる私も、間違いなく私である。カレナード、そなたは私に女を求めないのか」
マリラはボレロを脱ぎ捨てた。そして部屋着の一番上の紐を引っ張った。胸元が広く輝いた。
カレナードは負けられなかった。
「マリラさま、あなたと同じ女の胸がここにあるのですよ。それはお分かりでしょう。その感触を覚えたくはないのです。この体に女としての快楽の記憶を残したくないのです」
「ほう…、いずれ元に戻った時に、それらは忌まわしいものになるのか、カレナード」
「忌まわしいとは言いません。しかし、僕は男です。受け入れ難いことです。今夜のことは忘れます、どうかマリラさま、これ以上のことはお止め下さい」
マリラはカレナードの傍まで来た。
カレナードは思わず体術の防御の構えを取った。
女王は構わず彼の腕を取ると、そのまま胸にあてがおうとした。
彼はそれをも振り払い、じりじりと距離を取った。
「無かったことにしたいと申すか。…ここまで来て、そう言うか。一度知ってしまえば、女というものが良く分かるやもしれぬのに、惜しいぞ、カレナード」
「そうかもしれませんが、僕は納得できません」
マリラは肩を落とし、溜息を吐いた。
「頑固にもほどがある…」
カレナードはマリラが諦めたかと思った。しかし、間違いだった。
「馬鹿者め!踊り比べで私とあれほどに息を合わせたくせに、そなたは何も!何も感じなかったというのか!あの時そなたは正真正銘の男であったというのに!」
マリラの叫びは怒りを孕んでいた。
「それでも男か!逃げるのか、腰抜けめ!」
腰ぬけと呼ばれ、カレナードにも怒りが飛び火した。
「逃げませんよっ!うおおっ!」
「おのれッ!」
マリラが掴もうとして出した両腕を、カレナードが捕まえた。そのまま2人は床に倒れ、勢いのあまり内陣の中央まで転がった。
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