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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第6章「夏至祭」

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第6章「夏至祭」34 夜戦突入

マリラは悠々とカレナードの前に立っていた。片手を腰に当て、狙い定めた獲物を逃すつもりは微塵もなかった。
カレナードはまたしても女王に翻弄される立場を呪った。彼は簡単に一夜の愛人に成り下がる気はなかった。そうなってはならないと彼のプライドが告げていた。この体のままでマリラの情を受け止めることは、どうしても耐えられなかった。
彼女の心身を傷めずに、欲望だけを止めることができるだろうか。彼はドクトル・リリィに与えた苦しみをマリラに与えたくなかった。
マリラはゆっくりと近づいた。彼の心を男として、体を女と認めた上で、戯れを求めていた。
「逃げるな、カレナード。道化でさえここには入れない。今夜はそなたに触れていたいのだ」
恐ろしい誘惑だった。背中はまだマリラの手の温もりを覚えていた。カレナードは踏ん張った。
「マリラさま、お戯れはお止め下さい。今、それをなさるべきではありません」
「まるで道化のような物言いをする。おやめ、フールの真似など」
「今の僕には出来ません」
「なぜか」
「お分かりでしょう、僕の体は抱き合えない体です」
マリラはこともなげに言った。
「未熟者、抱き合う方法など抱き合う者同士で、いくらでも見つけられることを知らぬようだな。教えてやろう、さあ、私のもとへおいで」
カレナードは顔を横に振った。
マリラは舞台の上でしたように、優雅に左手を差し出した。
「手を取りなさい、カレナード」
マリラの美しい指が目の前にあった。彼は一歩下がった。マリラが一歩歩んだ。そうして2人は内陣の端まで行った。
「そなた、女に恥をかかせる気か」
「そのようなつもりはありません」
「ならば、優勝者の名誉をやり直しなさい。手の甲にキスくらい構わぬだろう。さすれば許してやろう」
「ゆ、許すと…」
「そう、女に対する無礼を」
カレナードはマリラが納得するならと、ひざまずいて、女王の手に軽く唇を当てた。マリラはすかさず彼の腕を取り、床のクッションの上に諸共に転がった。
「マ、マリラ…ッ!」
マリラの体がのしかかった。
踊り比べの時にはなかった激しい重さがあった。
彼女の体温と香りが衣装一枚を通して、物凄い速さで彼の感覚を痺れさせた。
マリラの両腕が彼の体を抱きしめていた。
マリラの胸の熱さが伝わってきた。彼は初めて気づいた。彼の胸も熱くなっていた。
それは戦いだった。カレナードはマリラと戦い、同時に自分自身とも戦わねばならなかった。彼の一部は間違いなくマリラを求めていた。それが心の一部であったのか、体の一部であったのか、はっきりしないまま彼はその欲求をねじ伏せるのに必死だった。
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