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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第1章「禁忌破り」

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第1章「禁忌破り」19 調停に作法あり(挿絵追加 2014/6/8)

ガーランドの調停開始式は、夏の盛りの八の月、デュボア湖とオルシニバレ市の中間の小さな公会堂で行われた。ここからが調停完了祭までの長い道のりだ。ガーランドが湖の上空で待機し、女王を乗せた飛行艇が公会堂に降りる様子をラジオの実況放送が伝えていた。
カレナードはシェナンディ家の従業員食堂で聞いた。
「マリラさまのお姿を拝見したい。けど、しばらく何も手につかなくなりそうだ。
調停期限は15ヶ月と決まったから、調停完了祭までにシェドナン奨学生試験は終わっている。おそらく冬至と年越し行事の前だ。マリラさまを見るのはその時にしよう。僕の16歳の一人立ちの記念に!」
それからの1年間、彼も調停期間中の市民も忙しかった。
各事業所や公共施設では湖の水利権をめぐって意見をまとめるために時間を作らねばならない。一定のルール下で自由に話すことから始まり、次第に条件を絞り込む。市民の発言の下には様々な事情と感情と理屈が潜んでいて、それは必ず作法の下で露わにすることが大事だった。それを経てからでないと誰も納得しないし、そこから先に進めない。それはネルー氏族も同じだった。
秋から冬にかけて、ヴィザーツ屋敷の飛行艇が頻繁にネルー氏族の逗留地に通っていた。マヤルカが記録をつけていた。
「九の月に14回、十の月に15回、霜の月には19回よ。
ねえ、お姉さま。遊牧の民は調停のお作法を知らないのかしら。」
フロリヤは悠然と答えた。
「あれは誕生呪を授けに行っているのよ。」
「ああ、そうか。ネルーの赤ちゃんだって誕生呪がいるわよね。」
「そうよ。それに調停のお作法なら向こうもしっかりしていてよ。」
「ねえ、うちはどれくらい水を使っているの。」
「それはシェナンディの家のことなの、それとも工場のことなの。」
「両方よっ!」
姉は帳面を並べた。
「ちょうどいいわ。マヤルカ、あなたも計算なさいよ。14歳なら一人前に家計を考えていい頃ね。」
「あら。家計はお姉さまの専売特許で」
妹の文句は姉にぶった切られた。
「水の一滴は血の一滴!ぐずぐず言わずにおやりなさい!」
公会堂では何日かおきにオルシニバレ市民とネルーの人々が腹を割って意見を交わした。時には紛糾し、つかみ合いにもなったが、下手に遺恨を残さないために徹底的な討論が繰り返される。ガーランドヴィザーツ達の数百年の仕込みによって暴力さえ作法のもとで行われた。これが15ヵ月も続けば、互いの事情も呑み込み、中には意気投合してしまう対立者もいるのだ。
カレナードやテイトのような出資寮生も職場と監督生の立場から、この問題を考えねばならなかった。いわば大人の仲間入りをした住民は調停期間中に1度や2度は自らの意見を述べる義務を負うのだ。
カレナードとテイトは出資寮生の水の使用量を計算した。
「衛生上、ギリギリだ。あいかわらず余裕は少ないぜ、カレナード。」
「これ以上悩みの種を増やしたくないな。テイト、他に水源がない限り湖の水は確保すべきだ。」
「俺も同じだ。水道と井戸の水源だって湖だからな。」
彼らは公会堂まで出向かなかったが、出資寮職員と出資者の調停準備会で発言を求められた。刺激的なやり取りに少年達は調停に参加している誇りを感じた。
挿絵(By みてみん)
工場でもたびたび調停準備会が開かれた。フロリヤが髪をまとめて作業服に身を包み、参加していた。
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