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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第6章「夏至祭」

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第6章「夏至祭」31 侍従を命ずると言うものの

「ジーナ、そして女官達よ。そなた達は明朝の日の出まで公務を離れよ。祭を楽しんで来なさい」
マリラの気まぐれに、ジーナは素直に従わなかった。
「侍従なしはなりませぬ」
「何を言っている、カレナードがいるではないか。紋章人が私の傍にいる。それで十分だ。」
カレナードもまた素直に従うわけにいかなかった。外の回廊にいる女官候補生は女王と女官達と紋章人の応酬に耳を澄ませた。だが、最後に言い分を通すのはマリラだ。
「私は数十年ぶりに踊り比べに出たのだ。素晴らしいパートナーがいたからこそ、最後まで踊れたのだ。
カレナードは僅か1ヶ月半で目覚ましく成長した。彼は先ほど以上の無礼はすまいよ、女官長。心配には及ばぬ。彼と水入らずで話がしたいだけだ。夏至祭なのだから。」
ジーナは秘かに決心していた。何があってもこのテントの傍に控えているのだ。そのために女官長職を解かれても後悔しない。今の女王には不測の事態がいつ起きてもおかしくないと、判断していた。
「カレナード、私達が戻るまでの間、あなたはたった1人の侍従です。マリラさまを頼みます」
カレナードは従うしかなかった。マリラ・ヴォーはいつもこうだ。カレナード・レブラントを前にするとなぜか豹変する。
出ていくベル・チャンダルがすれ違いざまに言った。
「逆らわないのがコツなのよ。オンヴォーグ」
彼女の芯のある声がカレナードを励ました。やがてテントは静かになった。マリラはそっと回廊を見てから、首を内陣に引っ込めた。
「まだ飲み物を出していなかったな」
マリラはギャレーに向かい、グラスを取り出した。カレナードはあとを追い、それは自分の仕事ですと、手を出した。その手をマリラは押しとどめた。
「女王とて、自ら盆を運びたい時もある」
カレナードはベルの言葉を思い出した。
「では、僕は別の用意をします。マリラさまの願うことと一緒でいたいのですが、それでよろしいでしょうか」
その瞬間に2人の間に踊り比べと同じ感覚が甦った。マリラは頷いた。
「そうしよう、カレナード。座卓は一つだけにしてクッションを両側に敷いておくれ」
どうやらマリラは差し向かいで飲みたいようだった。
彼女は気さくな手つきで軽いカクテルを用意していた。カレナードが内陣を整えているとチーズが焦げるにおいがした。ギャレーに戻ると、奥のキチネットでマリラが小型フライパンと格闘しているのが見えた。チーズを焼いていたのだが、皿に移せないでいた。
「引っ付いてしまった」
「ああ、大丈夫ですよ」
カレナードは木べらをうまく使ってみせた。
「美味しそうです、マリラさま」
「そうだな」
テントの外ではジーナとアライアが聞き耳を立てていた。ベル・チャンダルはイアカと共に入口に一番近い女官テントに待機していた。アライアは中の様子に微笑んだ。
「ままごとのようですわ」
ジーナの眉間には皺が寄りかけていた。
「そんな可愛いもので済むかしら」
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