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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第6章「夏至祭」

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第6章「夏至祭」29 殿方には分からない

カレナードは面食らって女官候補生の言葉を繰り返した。
「私達のマリラさまって…」
それがいけなかった。イアカ達は彼を取り囲んだ。
「あなた、ガーランド女王を何だと思っているの」
「本当に細っこい男ね、マリラさまにふさわしくないわ」
「髪を切った方がいいのじゃなくて!」
「新参のくせに態度がでかかったわ、お仕置きよ!」
女達の声を聞きつけて、新参の男達がテントから出てきた。そこには女達に次々に唇を奪われるカレナードがいた。
キリアンは思わず大声を上げた。
「おい、何やってるんだ!」
イアカは振り返って、偉そうに言った。
「罰よ!マリラさまがお許しになっても、私達が許さないわ。彼の唇ってリンゴの味がするのね」
男達はわけが分からなかった。
「きっとマリラさまも同じだわ。私達、マリラさまと間接キッスよ!」
女達は嬌声を撒き散らし、走り去った。アレクが棒のように立っているカレナードに声をかけた。カレナードは唇に指を当てていた。
「あれ…何…」
「しっかりしろよ、カレナード。全く羨ましいというか、気の毒というか」
他班の新参達もアレクと同様に「羨ましいというか、気の毒というか」と声を揃えた。キリアンは少々やけっぱちな号令をかけた。
「さあ、肉でも焼くかぁ!お客さんが来るぞぉ!」
女達に蹂躙され気が抜けているカレナードの横顔を眺めていたが、彼を追い立てるようにして調理場へ向かった。
月が高く上り、すっかり夜になるまで、彼らは仕事に没頭した。
研鑚会の他に仕事の邪魔をする者はいなかった。離れた舞台の方からは絶え間なく舞曲が聞こえた。時々笑い声が上がっていた。道化が得意の芸を見せ、腕に覚えのある者が祭りの喧騒を盛り上げているのだろう。
3時間後に第5レッドテントが受け持った子羊の肉とじゃがいもは底をついた。新参達が夜食をとっているところにひょっこり道化が現れた。彼は衣装を変えていた。真っ黒の蝙蝠のようなマントをつけ、その下に悪戯用の道具を忍ばせ、音のしないブーツを履いていた。炭火の燠をつつきながら、言った。
「紋章人、マリラさまにお詫びをしてくるといいですよ。1時間前に御自分のテントに戻られましたから、くつろいでいるところでしょう。踊り比べのあと、お会いしてないでしょ」
「僕が行くと、マリラさまのご気分を害しますよ」
「いやいや、女王は寛大でいらっしゃいます。一言でいいのです、ご挨拶に伺っておきなさい。シメは大事ですよ」
カレナードはあの場を自ら収めたマリラの姿を思い出した。祭りのために、女王は罪を不問にしたのだ。彼はエプロンを外した。
「すぐ戻るよ。マリラさまのテントまでひとっ走り行ってくる」
キリアンは「夜道で転ぶなよ」と言った。
「ああ、マヤルカとの約束もあるんだ。すぐに戻る」
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