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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第6章「夏至祭」

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第6章「夏至祭」28 女官を目ざす研鑚会

カレナードがほうほうの体で解放されたのは、10分後だった。軍楽団のボックス脇でひっくり返った彼をキリアンが起こし、舞台から助け出した。
「キリアン、君も笑っているんだな」
「そりゃそうさ、お前は落差が激しいぞ。やる時はやるのに、失敗も派手だ」
舞台で道化に追い回されてカレナードはやっと我に返った。彼は自分の祝祭はすべて終わったと思った。
艦長のレッスンも踊り比べの充実感も、小さな塊になって胸の奥へと消えていった。あとはテントの奥に引っ込んで、祭りの御馳走を提供する役目に徹しようと思った。
最後にマリラに無礼を働いたことが引っ掛かっていた。
「僕はなぜ…あのようなことを…」
しばらくマリラの顔をまともに見られそうになかった。
彼はアライアがマリラの髪留めを外して、髪を結い直しているのが目に入ったが、すぐに舞台を後にした。
軍楽団は休憩に入っていて、道化と配下の女達は早速無礼講にふさわしい曲を自ら演奏し始めた。
奇妙な太鼓の音と間の抜けた金管楽器が踊り比べの余韻を次第に消していき、観衆は腹ごしらえのために移動する者と、舞台に上がって道化達とふざけて踊る者、そこかしこで休憩する者に分かれていった。審査団の面々も、それぞれの楽しみの場へと散った。
カレナードがテントに向かう途中に新参男子一団が待ち構えていて、彼を胴上げした。
「ばーか、ばーか、カレナード!」
カレナードは叫んだ。
「皆、勘弁してくれよ!僕が悪かった、許してくれ!」
男達はドッと笑い、彼を降ろした。ナサールが厭らしく訊いた。
「マリラさまの唇はどんな味だったか、教えてくれ!」
「柔らかかったこと以外は無我夢中で覚えてないッ。残念だッ」
周りは「こいつは本物のバカ男だ」「アホだ」「ぶっ飛び過ぎだ」と嬉しそうに騒いだ。
ミシコが口を滑らした。
「1000ドルガはどうなるんだ、カレナード」
「ほとぼりが冷めたら、艦長に交渉してくるよ。皆にお礼をしなくちゃ、この1ヶ月半はとても気を遣ってもらった。最後まで踊れたのは、皆のおかげだ」
アレクが「よく言ったぞ、カレナード」と拍手した。彼らは優勝者に拍手を贈ると、それぞれの仕事に急いだ。
急ぎながら、カレナードを胴上げした時の彼の体の感触を手の平に留めた。彼らはカレナードの軽く柔らかい女の体の奥のとんでもない底力を感じていた。
カレナードが第5レッドテントに戻り、リンゴジュースを飲んだ後だった。女子古参訓練生の一団が彼を呼び出した。
「私たちは『女王の女官を目指す研鑚会』です。私は代表の女官候補生、イアカ・バルツァ」
名乗った女は、リンザほどには迫力があった。カレナードはエプロンを外して彼女達と向き合った。研鑚会のメンバーは6人いた。イアカ達は一応優勝を祝った後、彼を糾弾し始めた。
「私達のマリラさまによくもあのような無礼を!」
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