挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第6章「夏至祭」

213/388

第6章「夏至祭」27 メインイベントの幕切れ

アライアは突然の接吻が終わり、マリラがどう出るかを待った。隣のキリアンに言った。
「大丈夫です。夏至祭なのですから、彼をここで鞭打ったりはしませんよ」
唇を離したカレナードが我に返ったのは、数秒後だった。
驚いて硬直しているマリラの目が彼を凝視していた。そこには怒りと羞恥、さらに得体のしれない感情が見て取れた。
カレナードの血の気が引いた。彼は舞台にひれ伏した。
「ぼ…僕はなんてことをしてしまったんだ…」
観衆は相変わらず大騒ぎしていた。夏至祭のメインイベントは収集がつかなかった。マリラは自分が動くしかないと判断し、道化からマイクをひったくった。
「我がヴィザーツ達よ、静まれ。これは他愛ない事故である」
女王の声にヴィザーツ達の騒ぎは次第に小さくなった。声はいつもの女王だった。
「ちょっとした事故だ。祭り中であれば、罪科は問わぬ。そうであろう、ヴィザーツ達よ。幸い、私は何ともない。長めの接吻で少々唇が痺れているがな」
ヴィザーツ達から忍び笑いと安堵の溜息が漏れた。
「優勝者の無礼にちなみ、今より早速無礼講とするがよい。賞金の1000ドルガはしばらく艦長殿にお預けだ、よいな、優勝者よ」
カレナードは舞台の床に頭を着けた。マリラは彼を立たせると、道化に向かい大げさに言った。
「のう、ワイズ・フール。若い男はいいものよのう」
これにはヴィザーツ達もあちこちで噴き出した。
マリラは小首を傾げてカレナードを道化の方へ押し出した。それは合図だった。
すかさず道化は体中に付けた飾り物をぶらぶら振り回し、新参代表と腕を組んで無理やり舞台の前に出た。
「確かに若い男はいいものです。途方もなくバカをやってくれますからね。ばかばか、ウマシカでございますよ。それ、皆さん、手拍子を!バーカ、バーカ、ウマシカ~~。」
道化の音頭にのって、舞台脇に控えていた道化配下の女達が賑やかに登場し、カレナードを囃し立てた。観衆もそれに乗った。
道化は実に仕事熱心だった。今ここでカレナードをネタにして皆で笑い飛ばしておけば、心置きなく無礼講を楽しめるというものだ。
「バーカ、バーカ、ウマッシカ~」
カレナードは華やかな衣装を着けた女達に追い立てられ、扇子で叩かれながら舞台中を逃げ回った。数分前まで彼の華麗な跳躍に感動していたヴィザーツ達は、優勝者の情けない姿を見物することになった。
道化は彼に抱きついて「罰でございますよ」と叫んでは、何度も頬にキスした。カレナードが必死で抵抗すればするほど、ワイズ・フールは彼に飛びついた。そのたびにヴィザーツ達は笑い転げた。
マイヨールさえ「可哀そうなカレナード」と言いつつ、笑っていた。
エーリフは羨ましそうだった。
「役得だな、ワイズ・フールめ」
マヤルカはひどく悲しくなってそれ以上見ていられず、さっさと裏方の持ち場へ行った。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ