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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第6章「夏至祭」

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第6章「夏至祭」26 御手にキスを?

マリラはガーランド女王に戻り、カレナードは彼女に従属する紋章人に戻る時が来たのだ。
マリラが小さく言った。
「終わったな…」
対等な心と意同じ意志で過ごす幸福の時間は過ぎ去った。名残りを惜しむ暇さえなかった。
マリラに女王の威厳が戻っていた。彼女はカレナードの腕を取って高く上げた。
「よくやった、カレナード。そなたが勝者だ」
訓練生達の群れはカレナードの名を何度も叫んだ。マヤルカはうれし涙にくれた。
ヴィザーツ達の興奮からは遠く、カレナード自身は優勝の喜びに浸れなかった。彼は舞台に花が投げられるたびに頭を下げたが、心はまだ踊り手のマリラを求めてさまよい、半ば放心状態にあった。
やっと出番の回ってきた道化が「さて」と水を向けた。
「マリラさま。まずは男性の勝者にキスの名誉をお授けください」
「ああ、そうであったな」
マリラは左手を差し出した。その手の甲にキスしなさいという合図だった。カレナードは反射的にひざまずいた。それを見た観衆は微笑ましい光景を期待して、さざめいた。
道化は不安だった。カレナードの何かが彼の神経に障っていた。
「優勝したら1000ドルガですよ、1000ドルガ。それを差し引いても、もっと喜びに満ちた感じがあってもいいのに何ですか、ヤツの心ここにあらずという感じは」
カレナードは立ち上がった。
彼の視線の先はマリラの左手ではなく、もっと上にあった。道化の不安以上のことが起こった。
優勝者は女王の左手を取らなかった。女王を抱きしめると同時に、自分の唇を彼女の唇に押し付けていた。マリラは微かに呻き、裳裾が揺れた。
ヴィザーツ達は度肝を抜かれて声を失ったかと思いきや、割れんばかりの叫び声を上げた。怒号と爆笑と歓声が荒涼たる台地にこだました。
リリィは大声を上げて笑った。
「なにこれ、傑作だわ。あのバカ、やるじゃないの!あははははは!」
ウマルは苦笑していた。
「彼は打ち首だなぁ。ああ、可哀そうに」
審査団はなすすべもなかった。ヨデラハンは困惑していた。
「エーリフ、あれも君が仕込んだのか」
艦長は珍しく口をへの字に曲げていた。
「私の管轄外だよ。レブラント訓練生があれほど大胆だとは知らなかった」
マイヨールは拍手していた。
「若いわねえ」
興奮してキャアキャア騒いでいる女子訓練生の中で、マヤルカは怒っていた。
「カレナードのバカ!なんで肝心の時にそうなるの!」
男子訓練生は女子以上に騒いだ。
「それでこそ男だ、カレナード!」
「いけえ!カレナード!」
「たまらんッ!たまらんぞッ、カレナード!」
ピード・パスリはあきれていた。
「あいつは子供だ。俺よりはるかにガキだ、まったく…」
トペンプーラとヒロ・マギアは「良いものを見た」と話しながら、こっそりガーランドへ戻っていた。ヒロはおもしろがっていた。
「ありゃあ、これからも何かとやらかしてくれるぞ。そんなタイプだ。なあ、ジルーは彼を情報部にスカウトしたんだろ」
「なかなかの素質デス。が、航空部が彼を離さないでしょうネ」
「大したアナザーアメリカンだ。ああいうのがいないと、ガーランドはダメになる」
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