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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第6章「夏至祭」

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第6章「夏至祭」25 優勝者、決まる

ヴィザーツ達もカレナードが跳ぶたびに「おおっ!」と、ざわめいた。
シャルは驚嘆した。
「これは心臓破りの踊りだよ。俺、もう悶絶しそう」
カレナードは体に異常なほどの軽さを感じていた。
彼の耳には音楽しか聞こえてなかった。視界にはマリラと舞台の端だけがあった。
6回の跳躍を終えると彼は回転を繰り返し、マリラが踊りに加わった。2人は最後のアップテンポを踊った。一瞬の気の緩みがそれまでの積み重ねを消滅させることをよく知っていた。曲が終わり、音が完全に消え去ってしまうまで、全霊を込めていなければならなかった。
2人の脚が数度交差した。向き合い、背中合わせになり、また向き合った。
第15曲は残り20秒となった。
マリラはカレナードの目が自分より高い所にあると感じた。彼の目が見おろしていた。実際にそうだったのかどうかは分からない。だが、彼女は気圧されていた。彼の眼差し、彼の呼吸、彼の香り、彼のすべてが彼女に迫ってくるようだった。
マリラは初めてカレナードに正真正銘の男性を感じた。
彼女にとって、それは発見と戸惑いだった。それまでの女王は、男としてのカレナードを侮っていたのだ。
指先が微かに震えた。
最後の跳躍が待っていた。ほんの少し距離を置いた女王とカレナードはポーズを決める位置を目指して、軽やかに飛んだ。そのまま互いの腰に手を回し、小さな片足打ちをしながら一回転したのちにラストのポーズを取った。
マリラの視界が揺らいだ。彼女はカレナードと向き合って、両脚でつま先立ちをし、左手を掲げ右手を腰に当てて、すっくと立っているはずだった。
しかし、音楽が鳴り終わった時、彼女の右脚から力が抜けた。体がふらりと傾いて、カレナードが咄嗟に出した腕の中にあった。
誰がどう見ても、女王は最後にバランスを失ったところをパートナーに抱きかかえられたのだ。
カレナードは片腕で女王を抱えながらも、左腕は天に向かって掲げられ、脚も微動だにしないつま先立ちだった。ただ、顔だけが女王を気遣うように腕の中のマリラに静かに向けられていた。
エーリフは審査団の団長席から立ち上がるや、即座に宣言した。
「優勝者、新参訓練生男子代表、カレナード・レブラント!」
観衆はこの判定に歓声を上げた。
最後の最後まで真剣勝負を堪能したヴィザーツ達は舞台上の2人をたたえて、拍手を贈り、髪や衣装につけていた花を舞台に向かって投げ込んだ。女王崇拝者は「勝ちを女王陛下に譲らないとは!何という男!」と歯ぎしりしつつ、用意していた紙吹雪をやけくそのように宙に舞わせた。
カレナードはマリラを抱き起した。どちらも言葉はなく、大騒ぎする観衆の前で、肩で息をするのみだった。汗が流れ落ちた。2人はその場に突っ立ったまま、踊り比べの終わりを肌で感じていた。
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