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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第1章「禁忌破り」

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第1章「禁忌破り」18 探究心と調停と (挿絵追加2014/6/13)

フロリヤの眼に翳りがあった。
「彼らはね、誕生呪だけ持っているんじゃないのよ。
私は見たの。領主の末娘のお産は難産で母子ともに危なかった。彼らは特別な呪文をいくつも使って助からなかったはずの命を助けた。何日も付きっきりでね。彼らは優れた医療者だわ。あの技術があれば、お母さまだって…亡くならずにいたかも。」
それからふっと笑った。
「ヴィザーツの近くにいると、常識がひっくり返るのよ。禁忌をわすれるほどにね。」
「それはお嬢さまの観察力がありすぎるからです。どうか…もう止めてください。それより、僕をミセンキッタまで送って下さるくらい腕を上げてくださいよ。」
「ヴィザーツの飛行艇ほど速く飛べないけど、やってみせるわ。ねぇ、カレナード。私は次の人生があるなら男に生まれてみたいわ。」
「男に生まれると、素敵なドレスが着られませんよ。」
「あなた、着てるじゃない。」
「着せられてるんです!」
「次はどのドレスを用意しようかしら。暑くなると、襟で喉を隠すのが難しいわね。それより胸が無いのをなんとかしなくちゃ。」
「もうやりません!」
憤然としたカレナードに向かってフロリヤは切り札を切った。
「私の付き添い1回につき、ボーナスとして10ドルガ払うわ。」
2ヶ月分の給料だった。
「それにノート10冊とインク瓶を3本、臨時に支給しましょう。」
「う…1年間だけなら…付き添いいたします。」
「よろしくね、カレナード。私が危ない橋を渡らないよう見張っててちょうだい。」
それはそれで骨の折れる仕事です、と言いたかったが止めておいた。彼女の探究心が一線を超えそうなときは、なんとしても阻止するのが自分の役目だ。心にそう決めて、彼はフロリヤに付き合うことにした。
「アネッサ・ロドーと何を話たのですか。」
「私達が調停の当事者になるということよ。デュボア湖の水利権を遊牧の民が欲しているわ。知っているでしょ。」
「ネルー氏族ですか。ミセンキッタ領国寄りの緩衝地帯が本拠地と聞いていますが。」
フロリヤは窓から空を見上げた。
挿絵(By みてみん)
「向こうも夏場は高原の湖が必要なのでしょうね。だって牛と山羊が彼らの生命線ですもの。ここ50年でネルー氏族は政治的な組織を整えて、移動先の領国で少しずつ地権と水利権を認めさせるだけの勢力になったのよ。」
「つまり人も牛も山羊も増えて、養うために水争いを仕掛けてきたわけですね。」
「以前からオルシニバレ鉱山は彼らと喧嘩していたわ。だって湖の水を鉱山の廃液で汚さないように努めてきたのに、ネルーの家畜が水を汚すこともあるのだから。湖から流れ出てるデュボア川はオルシニバレ市に注いでいるしね。」
「それはそうですね。精密機械組合も、醸造組合や薬品業者も、いえ、ほとんどの人が湖の水利権を譲る気はないでしょう。工場も出資寮も水がないと困ります。」
「昨年と一昨年は市の自警団が臨時の動員をかけて湖の東岸に陣地を設けたわ。ネルーの人々も黙っていられなかったのね。何度も小競合いで怪我人が出たの。」
「フロリヤさん。『銃撃戦以前に調停の使者を立てるは賢者なり』と言ったのは誰でしたっけ。」
「それ、奨学生試験に出るわよ。300年前の法学者、東メイス領国のユゲ・ミケヤの言葉よ。それにならって、オルシニバレ領主もネルーの族長もガーランドの調停に同意したわ。忙しくなるわ。私達にとって初めての調停参加期間よ。」
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