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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第6章「夏至祭」

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第6章「夏至祭」22  踊り比べ第14曲

トペンプーラはためらわずに作戦を決行した。
「もちろんデス!」
彼は勝ちを意識したリンザにわざと乗った。
真に優勝を狙うなら、ここではリンザの勝ち急ぎの心を止めねばならなかったが、そんなつもりは毛頭ない。彼自身を捨て身にして舞台上で転ぶつもりでいたが、ついに彼女が勝ちを意識し過ぎたのだ。
そこで彼は第14曲で舞台を降りると決めた。
ベル・チャンダルやアカリの組が最後まで残る可能性はあったが、そこまでコントロールする気はなかった。
「艦長殿には義理を果たしましたから、許していただきましょう。それにワタクシ、極秘任務ですぐに発たねばなりません。ヒロのことだから、きっと新作のパイロットスーツを出してくるでしょうネ」
いよいよ第14曲をわずか4組で挑むことになった。14曲目はワルツだった。しかし、ただのワルツではない。
中間部でテンポが変調し、ワルツのステップからいきなり違う踊りに変わるのだ。そこでは男性が跳躍した女性を受け止め、そのまま数回転する技があった。カレナードはリハーサルのあとでマリラと練習したあの感覚を確かめた。エーリフから受けた注意を思い出していた。
「勝とうと思って勝てるものではないぞ。1曲1曲が勝負であり、集中力がすべてだ。雑念が入る余地を作るな。そして丁寧に踊りたまえ。闘争心に満ちたワルツは醜いものだからね」
カレナードは舞台中央を見て、呼吸を整えた。
「艦長、教えて下さったことはすべて守ります」
よく伸びた彼の背中にマリラの声がした。
「広い舞台になったな」
「そうですね、ちょっと寂しい気がします」
「舞台を去った者の分も踊ろう、思い切り美しく」
2人は他の組と並んだ。2人の重心は深く落ちすぎないよう細心のコントロールで支えられた。
テンポが変わった後、カレナードは跳んだマリラを受け止めた。彼女の胸が彼の目の前にあり、右腕でマリラの左腋を、左手でマリラの太腿を支えた。夢中だった。レッスンではエーリフの巨体に押し潰されたこともあった。キリアンを何度床に落としたか分からないほどだ。コツを掴んだのは、わずか1週間前だった。
彼はマリラを抱いたまま、3回転してみせた。
女王が着地した時、リンザが床に尻餅をついて呆然としていた。トペンプーラは申し訳なさそうにリンザに手を差し伸べた。
リンザとトペンプーラだけではなかった。とんだ番狂わせが起きていた。連鎖反応のように、ベル・チャンダルとアカリ・セナーテもパートナーの手から滑り落ちていた。彼らは大急ぎで曲の途中から演舞を続行した。
トペンプーラはわざとリンザを落としたのではなかった。彼は跳躍したリンザの美しいフォームを目にした一瞬、ヒロ・マギアお薦めのスーツで飛ぶ夜空を想像してしまったのだ。それが2人のタイミングを狂わせた。
第14曲のイメージはショスタコーヴィチ作曲
「ジャズ組曲第2番(正確には舞台管弦楽のための組曲)」のワルツ2から

https://www.youtube.com/watch?v=mmCnQDUSO4I
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