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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第6章「夏至祭」

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第6章「夏至祭」20 マリラ、鎧無き姿

「女王区画ベル・チャンダル嬢、ならびに総合施設部兵站セクション、ケニッヒ・ヤオセル殿。」
新参男子の群れから「オンヴォーグ、ベル・チャンダル!」の声が上がった。
ベルはそちらへもにこやかに手を振った。
「新参訓練生リンザ・レクトー嬢、ならびに情報部副長ジルー・トペンプーラ殿。」
大きな拍手が上がった。観客の目にもこの2人は優勝候補として映っていた。
ナサールは拍手しながら言った。
「華があるよな、リンザと副長さんは」
シャルが解説を入れた。
「そうそう、動きが大きくて凄いメリハリが効いてる。カレナードも言ってたよ、強敵だってさ」
アレクが珍しく話に割り込んだ。
「俺はマリラさまとカレナードの踊りが好きだな。上手いだけじゃない。胸に来るものがあるんだ」
周りの新参達は「ほおお」と声を上げた。
「見た目と違って、アレクはロマンチストだったんだ!」
当のアレクは可笑しそうだった。
「今頃分かったのか。鈍いな、見た目で人を判断しやがって。おっと、カレナードが出るぞ」
道化の声が最後の組を呼んだ。
「女王陛下マリラ・ヴォー、ならびに新参訓練生カレナード・レブラント殿」
カレナードはマリラより半歩後ろでお辞儀をした。マリラは膝を深く折って誰よりも優雅に挨拶をした。彼女は後ろにいるカレナードの手を取って、自分の横に出るよう促した。その心遣いに観衆はまたもや沸いた。
パートナーと手を繋いだまま、女王はヴィザーツ達に手を振った。腕を頭上に伸ばしている姿は伸びやかで、普段の凛々しく厳しい女王と同じ人物に見えなかった。
ピード・パスリは静かにその姿を見つめていた。彼は周りの熱狂に乗らず、しかし、熱心に踊り比べを見物していた。
「あの時のマリラさまを思い出すなぁ…。俺を思い切り子供扱いしたんだよなぁ…」
彼は苦笑した。
「いいんだ、おかげで俺はガーランドで生きていけるんだから。あの女男も同じだ」
ピードは思い直したように、他のヴィザーツ達と一緒に声援を送り始めた。すぐそばに同僚のドルジンがいて、2人はあとで艦長の酒蔵に行こうと約束した。
第11曲は例のシンクロナイズドダンスだった。ゆったりと曲は流れた。音楽に乗り、かつ寸分違わない動きをやってのけるには、大変難しいテンポだった。
踊り比べの開始からすでに45分が過ぎていた。集中力の切れた3組が失格になった。
退場する組が健闘を称える拍手を受けている間、カレナードはキリアンから水筒を受け取った。キリアンはアライアがやるように素早くカレナードの汗を拭いて、目尻の化粧を直してやった。
「いいぞ、カレナード。この調子で行ってくれ」
キリアンはリハーサルの最後に見たあの瑞々しさが再びカレナードに満ちているのを感じた。同性ながら、うらやましいほどの男ぶりだった。
「あいつは…もしや恋をしているのか…不死の女王に…。でも、彼にはその自覚がないのかもな…」
彼はマリラと共に第12曲の位置に着く友人を見遣った。
「頑張れ、自覚無き大物。女王に恋をするなんて、大物にしか出来ないぞ」
第11曲のイメージはハチャトゥリアン作曲バレエ音楽「ガイーヌ」から「アイシェの踊り」
下の動画は16分と長いのですが、その最後に「アイシェの踊り」の音楽があります。
ロシアのワガノワバレエ学校2010年卒業公演です。
https://www.youtube.com/watch?v=47PqyCHNMP8
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