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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第6章「夏至祭」

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第6章「夏至祭」19 踊り比べ第9・10曲

フィドルは第9曲をエキゾティズムたっぷりに奏でた。
踊りはアナザーアメリカのどの伝統にもない自由な形の振りであり、定型を打ち破っていた。おそらくここ200年間に起こった前衛舞踏の影響で作られたのだろうとエーリフは言った。ゆえに踊り手の解釈で、いかようにでも味付けができるのが魅力だったが、観客を説得できるだけの動きを見せてこそ意味があった。いわば表現力の大きさを測られる踊りであり、下手をすれば技量を観衆の前で丸裸にする怖さがあった。
この曲を踊る前にマリラは言った。
「別離は終わりではない。縁が切れても、縁が切れる前に培った心が残る。別れを悲しんでもよい、やがてはそれを力に出来ればいいのだ」
彼女の目は、「そなたと私もそうありたい」と語った。カレナードは自分も同じだとうなずいた。
途中で何度か女性を持ち上げ、あるいは背中に乗せる振りがあったが、あいかわらずマリラは長身に似合わない軽さだった。
2人はアイコンタクトの他はほとんど互いを見なかった。見なくても相手の位置が分かり、同じ心で踊っているのを知っていた。別離の苦しさの中にあっても、2人の動きはそれらを乗り越える意志を感じさせた。
キリアンは息をするのを忘れていた。
「なんて踊り方をするんだ…カレナード。マリラさまも…まるでずっと一緒に踊ってきたみたいに…」
隣のアライアもすっかり見入っていた。常にきちんと閉じられている彼女の唇が緩んで、吐息めいたものが漏れ出した。
ヴィザーツ達は静かに第9曲が終わるまで待った。最後に男と女が床に倒れて音楽が終わると、嵐のような拍手が起きた。失格者は1組だけだった。
14組、総勢24名の踊り手は第10曲で大きく減った。
マルバラ領国の暗黒芸術の最盛期に生まれた曲は容赦なく踊り手の足を滑らせた。しっかり組み合って踊るだけに転ぶ時は派手だった。
マルバラ出身のシャルが「どなたさまもお気の毒に」とつぶやいた。
「いや、ホント。この踊りはターンターン、ターンの連続!見てる方がヒヤヒヤするぜ」
ミシコも曲が終わった時には、思わず大声を上げてしまった。
「ああ、カレナードは転ばなかったぞ!よくやった!」
ナサールは相変わらず「たまらんなぁ、この緊張感!」と叫んではその辺を飛び跳ねた。それに新参男子が加わり、喚声を上げ始めた。
「オンヴォーグ、カレナード!」
観衆は自分のセクション代表に向かって即席の応援歌を歌い、あちこちで応援合戦が展開した。艦長はその盛り上がりを見て、ワイズ・フールに合図した。彼は合点とばかりに、残った9組を舞台の中央に並べ、改めて紹介した。
「十ヶ月訓練生ソカンリ・ジカ嬢、ならびに警備隊航空部テナン・ボルタ殿」
「艦橋第2セクションのアカリ・セナーテ嬢、ならびに機関技術部シャルレ・ラジアン殿」
「甲板材料部のヤンヤン・カン嬢、ならびに管制部第3セクション、ジャン・バレ殿」
道化に呼ばれた男女は一歩前へ出て、優雅にお辞儀をしたり気軽に手を振ったりして、それぞれの応援に応えた。その間、軍楽団は軽快なワルツを流した。
第9曲のイメージはナチョ・ディアト振付け「コール・ペルドゥート」Cor Perdut
歌はマリア・デル・メール・ボネMaria del Mar Bonetがカタロニア語で歌ったもの
原曲はトルコ歌謡の「ジャスミンの花束」
https://www.youtube.com/watch?v=_Tanwd63zkE

第10曲のイメージはタンゴの名曲「ジェラシー」
https://www.youtube.com/watch?v=s77mnCOMMbI&index=8&list=PLgG8uiC4aYCZU8PqNwlImu_eNxoQMF5Nd

アルフレッド・ハウゼ楽団はやっぱりいいわぁ…

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