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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第6章「夏至祭」

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第6章「夏至祭」18 踊り比べ第8曲

第8曲は中央ミセンキッタの荘重な宮廷舞踊を基にしていた。
男女が体の前で両手を組み、互いに脚を大きく相手の前に出しては睨み合う、まるで男と女が体を張って争うような振りが特徴だった。片脚を大きく振り上げるさい、相手の脚にぶつければ失格間違いなしの難曲だけに、見物しているヴィザーツは審判の旗が揚がるたびに大騒ぎした。
大騒ぎのもとは他にもあった。
滅多にみることのない女王の脚が衣装の下から現れるのだ。脚は太腿まで見えるほど大きく上がり、高さはカレナードの肩まであった。薄いタイツに包まれているとはいえ、この大胆な踊りっぷりで、彼女の脚の形はヴィザーツの記憶に残ることになった。
カレナードはすぐさまマリラに合わせた。脚を上げる方向とタイミングを寸分の間違いなくやってのけた。彼の脚先もまたマリラの肩まで上がった。それは男気の象徴として大歓迎された。
「いいぞ、紋章人!もっとやれ!」
「新参のひよッコ!女王に負けるな!」
「おみ足!おみ足!マリラさまのおみ足!」
曲が終わり大きな拍手が鳴った。さらに組は減って、15組になった。ここで軍楽団が楽器の入替えのため、小休止があった。
道化は盛り上がったヴィザーツ達のために、マリラとカレナードを連れて舞台を一周した。マリラは道化の目的をよく心得ていた。彼女はカレナードに言った。
「さっきのアンコールだ、ラストの決めポーズで行こう」
彼は笑って応じた。そのポーズは宮廷舞踊にしてはかなり際どい線上にあった。
2人は道化について、大きなツーステップを踏み、8歩ごとに止まっては大きく胸を反らして両腕を横に張り、腋下の空間を美しく見せた。その時、マリラはわざと片腕を伸ばして裾を持ち上げ、脚を見せた。
予想もしない女王の遊びだった。大喜びする観衆に対し、リリィは苦虫を噛み潰したような気分になった。
「やりすぎだわ、まるで下界の酒場女みたい」
ウマルは笑った。
「そうかい、マリラさまが結構なサービス精神の持ち主と分かって嬉しいよ。
今夜の女王は本当に楽しそうだ。カレナードとはとても息が合っているよ。巷では出来レースなんて言っている奴もいたが、これは素晴らしい競技会だ。そう思わないかい、リリィ」
「…あなたって意地が悪いようには見えないけど、そうでもないのね」
「カレナードのことか。彼を話題にしてはいけないのかな」
リリィはウマルを睨んだ。少し頬が赤かった。彼はリリィの額に手を当てた。
「熱は出てないはずだが」
「あんたなんか嫌いよ」
ウマルは睨んでいる女医を無視して舞台に視線を戻した。
「次も恐ろしく難しい曲だ」
第9曲はアナザーアメリカでも異色の文化圏を持つブルネスカ南方の乾燥地帯で歌われる別離の歌だった。哀調を全面に押し出しながらも強い旋律は、その風土の香りに満ちていた。ウマルは「故郷の歌だ」と目を細めた。
リリィは嫌いと言いながらも、彼の横にじっと座っていた。
第8曲のイメージはプロコフィエフ作曲のバレエ音楽「ロミオとジュリエット」から「騎士の踊り」
某携帯のCMに使われて知れ渡るようになりましたね

Prokofiev - Dance of the Knights
https://www.youtube.com/watch?v=DUmq1cpcglQ&index=7&list=PLrH2yPCKm9AVrFQcIMrDfh14Is_q8vF6I
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