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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第6章「夏至祭」

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第6章「夏至祭」17 踊り比べ第6・7曲

舞台の脇では出場者達が汗を拭き、それぞれに次に備えていた。キリアンは余計なことは言わずに、カレナードが水筒の塩レモン水を飲むのを見守っていた。隣ではマリラが髪留めを付け直していた。
「アライア、もう少ししっかり留めておくれ。ああ、それでいい。ありがとう」
女王の額に汗が光っていたが、それさえも美しく輝いていた。
彼女の祭り衣装は形こそ他の女性と変わらないが、袖口と襟と裾には特別な刺繍があった。赤と銀糸で植物文様がうねり、浮き船ガーランドの船主にふさわしい荘厳があった。飾り帯は銀色でこれも幾何学模様に蔓草の文様が絡んでいた。
時々マリラとカレナードは互いを見ていた。言葉はなかったが、5曲を踊り終えた達成感とこれからのエネルギーを交わしているのだ。キリアンはその邪魔をしないように、エールを込めた手の平でカレナードの背中を押した。
カレナードは少し振り返って、マリラに向けるのと同じ信頼のまなざしをキリアンに送った。
第6曲はいきなりの難曲だった。南国オスティア領国の情熱的な旋律がこれまでと全く違う緊張感を舞台にもたらした。フィドルの音が官能的になり、弾き手もまた汗まみれでヴィザーツ達の興奮を支えた。
エーリフは団長席で自らレッスンをつけた代表者達に満足していた。
「ふっふっふ…、ハイレベルな戦いになるぞ。私の弟子達以外にも猛者はいたようだが、マリラさまは絶好調であられるし、リンザは負ける気がしないだろう。あとは情報部のゆで卵に任せて、私は公平に審判を務めさせてもらおうか。さて…」
審判員席のヨデラハンとマイヨールはそっと言葉を交わしていた。
「あなたの教え子は見ごたえがありますな、マイヨール教授」
「そうでしょう、女王より背が低いのにそれを感じさせないわ。十ヶ月訓練生の方もなかなかでしょ」
「ところで歴史学的に見て、ここ数年のアナザーアメリカは変動期にあると考えますかな」
「参謀室長、あなたがこの席でそれを口にするの」
「失礼、先生。私に欠けているものがあるとすれば、それは歴史的視野のものです。日頃あなたとゆっくりお話しする機会がありませんでしたからね」
ヨデラハンの精悍な禿頭に似合わぬ柔和な物腰だった。マイヨールは簡潔に「大きな変動期であることは間違いない」と言った。
「ヨデラハン、明日の後夜祭の前に時間があるなら私見を述べさせていただくわ」
「かたじけない、マダム・マイヨール。審査に戻りましょう」
23組の踊り手達は第6曲を必死で持ちこたえた。
だが、第7曲はさらに問屋が卸さない。これは第5曲と同じく変拍子のうえに、行進曲風のダンスでもあったので一歩の間違いが命取りになった。明るく勇壮な旋律の下で失格の旗が一斉に上がった。舞台に残ったのは19組になった。
ミンシャはマヤルカが真剣な面持ちで舞台に向かって「集中力!集中力!」と念を送り続けているのに気づいた。
「私のカレナード!優勝じゃないと許さないわ!」
どこか鬼気迫るマヤルカの姿だった。
第6曲のイメージはコンチネンタルタンゴの名曲「碧空」
アルフレッド・ハウゼの演奏で
https://www.youtube.com/watch?v=QzwhjY5TWus

第7曲のイメージは「カルミナ・ブラーナ」6曲目の「ダンス」
Carmina Burana (Carl Orff) Uf dem Anger (Tanz)
https://www.youtube.com/watch?v=b40ktuJLnsQ
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