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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

序章

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序章2 ナノの響き

リュスは彼女の首に両腕を回した。
「君は傷ついた子供だったが、今は若々しいエネルギーに満ちていて素敵だ。
恋人になってもいいかい」
「友人のままでいてくれると助かるわ」
リュスの腕がマリラから離れて、がっくり垂れた。
「またふられた」
「私、恋愛には不器用なの」
「仕事が終わったら、そっちの方もじっくり語り合おうよ」
「無駄だと思うわ。ほらほら、リュス!もう着岸するわよ!」
2人は工場専用バスに乗り込んだ。
マリラは父から譲り受けた黒髪を頭の後ろで束ね、気分を切り替えた。緑の目は母からもらった。
リュスとの仕事は四度目だ。彼のインタビューを耳にしながら彼女はインスピレーションの翼を広げ、シャッターを切る。その作業は彼女の内面に安心と充実を生んだ。
彼が言うように、ファインダーを通して現実を受け入れているのかもしれない。私は複雑なのねと、マリラは束ねた髪を揺らした。
バスは、ラサ・アメリカという名の広大な組立工場のゲートを通過した。マリラとリュスは指紋認証のパスを受けたあと、広報係長が先導して軌道エレベーターエネルギー機関の巨大システムについて説明を受けていた。
不意にマリラの電子ノートが鳴った。構えていたカメラのネットアクセスランプが盛んに点滅した。
「変だわ。ノートの電源は切ってあるのに」
リュスも電子ノートが勝手にネット通信を始めたので、急いで停止ボタンを押したが、制御できなかった。突然全てのネット端末から音が響いた。工場内にアラームが鳴るかのように、あるいは人が歌うかのように、その音は広がって消えた。それは始まりだった。
この耳慣れぬ音が響いてから10秒の間に、何かが凄まじい速さで変化していた。人の目には把握できない何かが進行していた。工場の人々は、空気が変わり、空間が揺さぶられているのを感じたが、それは静寂の中で起こっているのだ。
彼らは作業を中断し、事態を分析しようと集まり始めた。5分後に爆発が起こった。正確には空気が突然破裂し、暴風と化したのだった。それは冷たかった。
マリラの意識はそこで途絶えた。最後に目にしたのは、破れた屋根の向こう、空を覆っていく黒い嵐と稲妻。
暴風が彼女と周りにあった全てを吹き飛ばしていった。
数時間後、彼女は瀕死の重傷を負いながらも、数少ない生存者になっていた。
意識を取り戻した時、うす暗闇の中、空気はひどく寒かった。大量の失血のために、動く力はほとんど残ってなかった。
「誰か…助けて!ここにいるのよ。リュス!どこなの…」
声がかすれた。それでも彼女は腕を伸ばし、手探りを繰り返した。
「異常事態だわ…。規模の大きい事故か、災害…。ああ、リュス…あの音だわ…、この有様には絶対にあの音が関わっている…」
一斉にネット端末から発せられたのが気になった。
この地域だけならまだ救助を期待していい。だが、あの音が世界中のネット端末で響いたのなら、どこもかしこも黒い暴風に襲われているのかもしれない。ナノマシンと同様に、地球上を覆うネットワークシステムから外れている地域など皆無なのだから。
マリラはその考えを退け、もう一度声を限りに叫んだ「助けて(オスクール)!!」
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