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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第6章「夏至祭」

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第6章「夏至祭」13 舞台上へ

カレナードは偶然マヤルカと一緒にいた。彼女はいつもと違って、赤い髪を頭頂部から高く盛り上げていた。彼女は約束をねだった。
「裏方の仕事が終わったら、私と踊って。楽団がお開きになってたら、私が歌うから」
祭りの熱狂とは別に、彼女の瞳の奥に寂しさがあった。彼女も女達の中で玄街の呪いに耐えているのだ。
カレナードは約束した。マヤルカの笑顔を見るのは嬉しかった。2人はもう一度抱擁した。
間もなく新参生のテントは空っぽになった。
彼らは夏至祭での責任を果たすためにそれぞれの持ち場に向かった。
カレナードとアレクとキリアンの3人は第5レッドテントの奥の調理場に入った。隣の第6レッドテントではミシコがビーフの塊と格闘していた。
キリアンがカレナードに注意していた。
「服を汚すなよ。それから今のうちにこれ食べとけ。踊り比べの集合まであと1時間だ」
彼は貴重品のチョコレートを取り出した。それから水筒に水とほんの少し塩とレモン汁を加えた。
アレクが椅子を出した。
「俺も見に行く。しっかりやってくれ」
他の班の連中も「楽しみにしているぞ、俺達の代表」と声を揃えた。
夏至の太陽は夕暮れになっても淡い光を十分残していた。舞台の祭壇は取り除かれ、軍楽団が定位置についていた。ライトが様々な色を投げかけている。
艦長が伝統衣装に身を包み、他の審査員と雑談している。
道化は鮮やかな虹色に染めた全身タイツを着て、淡いピンクやレモン色のチュールを重ねたチュチュを履いていた。帽子にはガラス玉を散りばめた王冠を縫いつけてあり、いっぱしの踊り子のように繻子のダンスシューズで軍楽団の指揮者を突いては怒鳴られていた。指揮者の文句は決まっている。
「道化なんぞワニに喰われてしまえ」
ハーリとヤルヴィは予備の弦と弓を椅子の下に置きながら、なんでワニなんだろうと言い合った。
いよいよ舞台の周りにヴィザーツ達が集い始めた。その頃には25組の出場者がウォーミングアップに入っていた。
大霊祭で走り回ったあとだけに軽く済ます者が多かった。
マリラとカレナードもタイミングを合わすだけにしていた。マリラが「先ほどキリアンに会った」と言った。
「いい友人だ」
「ええ、彼はずっと練習相手をしてくれました」
「そうか。第14曲の最後のリフトをもう一度頼む」
マリラはワルツの旋律を口ずさんだ。カレナードは彼女と数ステップを踏んで、床を離れた女王の体を支えた。キリアンよりもはるかに軽く感じた。彼女はより優れた踊り手だった。
軍楽団と舞台補佐の面々は崖下のボックスに控えていた。
いったんそこへ引っ込んだ出場者達が次に舞台に上がる時は、もう入場行進を兼ねた第1曲なのだ。ほとんどのライトが消えて、舞台の端に並んだ小さな灯りだけが残った。観客はざわめきながら、夏至祭メインイベントの開始を待った。一つだけ大きなライトが進行役のワイズ・フールを照らした。ヴィザーツはお辞儀をする道化にヤジを飛ばした。
「引っ込め、バカ・フール!」
「早く女王と例の新参を出せ、アホ・フール!」
「今年は手前の悪戯に仕置きしてやるぞ、クソ・フール!」
「1分以上の挨拶はやめろ、デベソ・フール!」
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