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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第6章「夏至祭」

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第6章「夏至祭」11 カレナード、輝く

キリアンは舞台脇にいた。すぐ横にアライア・シャンカールがいて、話しかけてきた。
「カレナードは背中が良く伸びているわ、調子良さそう。マリラさまもいい動きだわ」
キリアンはそのベテラン・ヴィザーツが女王の女官だと知った。
「昼間なのにライトを点けるのですか」
「そうよ、エーリフの頭は夕暮れに舞台にライトが映えている光景が見えているのよ」
「器用なお人ですね」
「多才だと言ってあげて。私もそうだけど」
舞台上は早くも第5曲が終わり、アライアはさっと舞台へ出てマリラとベルの汗を拭い、衣装を手早く整えた。その速さはキリアンの10倍は有能に見えた。おかげでマリラもベルもパートナーと動きの確認をする時間が持てた。
ゲネプロは2時間ほどで終わった。艦長は舞台に戻ってきて、出場者と舞台補佐と軍楽団と舞台スタッフを全員集めた。
「本番は午後6時スタートだ。30分前に集合すること。スタッフは1時間前から最終チェック。では、皆さん、よろしくお願いいたします。」
舞台ではまだ練習に余念のない何組かが残っていた。
エーリフはその中にマリラとカレナードを見た。2人はシンクロが難しいあの第11曲をゆっくりと合わせていた。長い裾からマリラの足首がすらりと出ていて、その後ろでカレナードの足がぴったり同じ速度と高さを保っていた。
キリアンは見とれていたが、舞台端のアライアは少しじれったそうだった。
「もう正午になりますわ。お急ぎくださいませ、マリラさま。詠唱礼のお仕度がありますから」
軍楽団が居場所を舞台スタッフに明け渡し、さっそく詠唱礼と大霊祭用の祭壇が運ばれてきた。マリラは練習を終えて、アライアに分かったと手を振った。それからカレナードに挨拶をした。
「いい舞台になりそうだ。本番もこの調子で踊ろう」
2人は握手して別れた。
キリアンは驚いた。女王と一緒にいるカレナードがこれまでにない輝きに包まれていたのだ。堂々として自信に溢れ、男の頼もしさに加えてそれだけでない女の香りがした。キリアンはその姿に耐え難いほどの衝撃を受けた。
女王マリラがカレナードをそうさせたのだ。彼女はカレナードにとって絶対的な存在なのだと直感が告げていた。女王以外に誰が彼をあのように瑞々しい男に出来るだろうか。
あの2人のあいだに自分の入る隙間などない。しかし、彼はどこかに隙間を見つけたかった。カレナードが早く昼食に行こうと言った。キリアンは動揺を隠した。
「ああ、午後も大忙しだ」
すでに女子達は大急ぎで食事を終わらせて、身支度に取り掛かっていた。結った髪に飾りをつけ、祭り用の化粧をして、大霊祭で使うケープと仮面を背中に下ろした。
午後の1時半を過ぎる頃、舞台を臨む斜面にヴィザーツ達が並び始めた。舞台奥に祭壇が高く組まれて、訓練生達はなぜここが夏至祭の場所なのかを知った。祭壇は崖を背にしており、崖には午後の陽と舞台上からのライトが大きな影を作っていた。
カレナードはその影に見覚えがあった。
「ウーヴァ…」
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